内容説明
あの独特なデザインの「宮型霊柩車」がどのような経緯で誕生し、全国に広まったのか。明治から現代までの葬送の変遷を解明した唯一の書。文庫化にあたり、急速に宮型霊柩車が路上から姿を消し、洋型霊柩車が主流となった背景にも迫る。
目次
1 キッチュの意匠(宮型霊柩車 四つのローカル・カラー ほか)
2 明治時代の葬送(「おともらいかせぎ」 座棺から寝棺へ ほか)
3 霊柩車の誕生(すたれる葬列 路上からの追放 ほか)
4 霊柩車についての断章(迷信と霊柩車 交通制度のアウトサイダー ほか)
5 消えゆく「宮型」―文庫化にあたっての補筆(偽装する霊柩車 より小さく、こぢんまりと ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はちてん
24
1984年単行本が出て以来長生き著作だ。著者は「霊柩車の井上」の異名を持つ。2013年文庫化され「消えゆく宮型」の章が追加された。宮型霊柩車は大正18年大阪の葬儀業鈴木勇太郎により発案され、昭和26年から東京中野の米津工房が約7割の圧倒的シェアで宮型を製作していた。今は操業していない。など宮型を中心に霊柩車に関する詳細wを論じている。著者は宮型霊柩車の意匠は全て歴史的様式からの借り物で、まるで日光東照宮のようにキッチュであるが権威主義的魅力がある。宮型霊柩車の衰退はキリスト教の信仰は受け入れないが、その風2013/09/18
柊子
19
小説に出てくる葬儀や霊柩車の話も紹介されていて、愉しめた。35年前、実父はコテコテの宮型で送ったが、10年前に他界した義父は、洋型の「白い霊柩車」。家族4人も同乗し、義父と最期のドライブをしながら火葬場に向かった。ところで文中、やたら平仮名表記が多いのが気になった。けっきょく・つよく・うったえる・ひろがる・もうける・のべる・ざんねん・・・等々。どうして漢字ではないのだろう。2016/03/24
ふろんた
12
霊柩車を紐解き、近代・現代の葬儀の風習の変遷がわかる。霊柩車を見たら親指を隠すって子どものお遊びだと思ってたんだけど、大人も普通にやってたのか。2016/12/12
Kumisuke92
9
賑やかな葬列を好んだ明治の庶民。実は葬儀業は、大名行列の演出を行っていた会社が転業したのだ。そのスペクタクル。しかし、時代が変わり、車社会の到来の中で、歩く葬列は邪魔になる。そこで生まれたのが霊柩車である。葬列の華やかさを補うのは、東照宮風や平等院風車体。時は大正。大衆文化が育つ時代。庶民が牽引しつつ、上流階級にも同質化した文化が広がる。しかし、かつての上流的葬儀が失われることへの抵抗感は残り続けた。その抵抗感の流れは昭和天皇の洋風霊柩車が加速。今や庶民からもあの宮型は見られなくなってきたのだ。。。2016/03/23
モモのすけ
7
そういえば最近「宮型霊柩車」見なくなったな。もちろん見かけたら親指隠しますよ。2013/01/17
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