内容説明
日本人が初めて海外に向けて、日本文化の全体像を紹介した書である『武士道』。桜花にたとえられた武士の精神と、日本人の依って立つ思考や道徳意識はいかにして生まれたか。国際化が求められる今だからこそ本書を通して考える─日本とは、日本人とは何なのか、と。
目次
はじめに 日本人と武士道の全体像を示した書
第1章 正義―日本人の美徳
第2章 名誉―日本人の責任の取り方
第3章 忍耐―謎のほほ笑み
第4章 武士道―その光と影
対談 山本博文×明石康―功罪を正しく評価して考える足がかりに
『武士道』をより深く知るための読書案内
新渡戸稲造 略年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
39
ここで扱われなかったら読まなかった本。『葉隠』のような本かと思ったら随分と異なる。黄禍論に代表される残虐で好戦的な良く分からない人たちという恐怖と先入観を、その表面的な像としての武士だけはそのままに換骨奪胎させ、欧米人にも理解可能な人々と紹介できたのは、新渡戸が元武士の子弟でかつキリスト教徒という、どちらも理解可能な立場にいたからに他ならない。我々は『菊と刀』には成立過程から反発を覚え、不正確な部分を指摘するが、牽強付会ながらも我々の無意識を言語化するとこうなのかと、どこか突き放されて、納得させられる。2023/08/06
Eric
19
特に切腹に焦点を当てて解説されていたのが印象的。2021/03/07
出世八五郎
16
武士道は未だ生きていると思う。歴史小説ファンならば相通ずるものがあるから。“忠義礼信仁智勇”で成立つ武士道だが、日本文化で私が好まないのは、名誉を得る為の忠義と月代を剃る事だ。今井正監督の武士道残酷物語に顕著であるが、名誉の為に忠義を貫く。其処では身内の命さえ犠牲になる。しかし、現代と過去の価値感を比較し嫌悪しても仕方がない。本書は原典の解説書ゆえ、武士道の起源について新渡戸の間違い(※故意?)を指摘したりして有用だと思う。この古典を読むのは2回目だが、一度目は良く分からず、本書で大分理解できた。2016/03/16
アルカリオン
13
p44 『武士道』が書かれた1899年は日清戦争(1894-1895)に勝利した日本が列強の仲間入りをしようとしていた時期であり、そんな日本に欧米の先進国が注目していた時期である。実は「注目」というのは「新興の小国が大国・清を倒したことに対する驚き」という素朴なものではなかった。歴史に残る外国人殺害事件や「切腹」の態様について伝え聞いていた欧米人のなかには長らく、日本は「好戦的で野蛮な未開の国」というイメージが定着しており、そのような国が台頭してきたことに対する警戒感に基づいた注目であった。2021/09/01
スミノフ
12
読むと背筋が伸びる思いがしました。 常に死をもって責任を取る生き方の、何と緊張感に満ちたものか。 歴史の中で、こうした生き方を貫いた先人たちがいたことを、次世代に伝えていきたいと感じます。 翻って、今の自分は、仕事に対してどこまで真摯に向き合えているか、問いを突きつけられる本でした。2022/06/21