内容説明
中二でおやじを亡くしてから、母と妹のために、ぼくは毎日せっせとご飯をつくる。冷蔵庫を開けたら戦闘開始! 切ない日も、けんかしたってこの味が家族の幸せを守ってるんだから。そうして十八にしては所帯じみていたぼくに、突然の恋が訪れた。児童文学の名手が繊細に描く、少年の恋と、日常のきらめき。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masa@レビューお休み中
85
ぶっ!いきなり、吹き出しそうになってしまった。これ面白すぎる。見かけは、普通の大学生の男の子が、料理をはじめた途端に、いきなり「ほら、やっぱり。それにしてもわたしってついている。それって日ごろの心がけの賜物かしら。」とか言い始めるんですよ。実際に口に出すわけではなく、心の中で話しているだけなのですが、何度も何度も似たような場面が登場します。この心の中での妄想シーンがとにかく面白いんですよね。趣味は料理に読書に妄想。働いている母親と妹のために日々のごはんを毎日作り続ける洋の日常を描いた物語です。2013/01/14
るぴん
46
父が亡くなり、専業主婦だった母が働きに出なくてはならなくなった中2の時から、母と妹のために晩御飯を作り続けている大学生の洋。男の子が主人公の石井作品を読んだのは初めてで、新鮮だった。マイペースな妹の美砂に最初はイライラしたけれど、最後まで読むと兄に対する美砂の気持ちが分かり、あぁいい兄妹だな〜としみじみ思えた。そして石井さんの描くおばあちゃんは、どの作品のおばあちゃんも皆んなチャーミング!今回の川向こうのおばあちゃんもいい味出してたなぁ(*^^*)2018/05/11
emi
40
中学二年で親父を亡くしてから、会社勤めすることになった母と、まだ小学生の妹のために毎日ご飯を作ることを決意した主人公・洋。大学生になっても、夜遊びも彼女も無縁の青春時代。妹にはキャベツくんと揶揄され、何が楽しくて生きてるのかと友達に問われても、料理・読書・妄想としか言えない日々。そんなある日、妹の親友・かこちゃんを紹介されて…。きっと、こんなお兄ちゃんほしい!とか、こんな息子ほしい!とか、言われちゃうであろう洋くん。初恋話が中心ではなく、その女の子を通して見えた自分の家族の思い。家族の良さを感じられる物語2015/10/16
Rosemary*
40
父を病気で亡くし働きに出る母にかわり、家事をするようになった兄、洋。今ではすっかりスーパー主婦です。今時の女子高生、妹の美砂。二人のやりとりがとても微笑ましくて羨ましい。洋が、やらされた感がなく、妄想などしながら、たのしんでいるところがとてもいい。残された家族がそれぞれ相手を想い気遣いながら生きていく。「痛くたって悲しくたって平気なふりして明るく振舞う。小さい頃からずっとそうだった、とくに家族の前では。」と美砂のことを語ったおばあちゃんが素敵です。柔らかなキャベツのような優しいお話。2014/04/29
tokotoko
38
スーパーや八百屋さんで当たり前のように見かける・・・キャベツ。このお話に登場する家族も、ホントにどこかに普通にいそうな人達でした。でも、普通でいるためにちょっぴり無理をしてたり、涙こぼしてたり、こっそりね、恋もしてたり・・・。そんな日々が素朴な文章でつづられています。この本を読んでから、キャベツを切ったり、切りそこないをポリポリかじったりするたびに、この家族のこと思い出します。元気かな?って思って、ニッコリしています。きっと何年たってもね、この世にキャベツがある限り!この家族のこと、忘れないと思います。2015/10/10