内容説明
大学生の吉岡が二度目のデイトで体を奪ってゴミのように棄てたミツは、無知な田舎娘だった。その後、吉岡は社長令嬢との結婚を決め、孤独で貧乏な生活に耐えながら彼からの連絡を待ち続けるミツは冷酷な運命に弄ばれていく。たった一人の女の生き方が読む人すべてに本物の愛を問いかける遠藤文学の傑作。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
52
通俗的でモリモリと読ませる。「沈黙」が硬ならば本作は軟か。吉岡が特に非道い男とは思わない。ではミツが聖女なのかというとそれは男ならではの感傷で、私にはただそうとしか生きられなかった女として映る。本作を“恋”の棚に置いた神楽坂の書店、かもめブックスのセンスに唸る。2016/06/12
じいじ
52
ユーモア軽妙な筆致の長編。哀愁が漂う終盤では目頭が熱くなった。物語は、終戦三年後から始まる。主人公《ボク》は、学友・長島繁男と神田の汚い6畳で下宿生活。貧乏なボクはアルバイトに精を出す。そんな折、純真無垢な女・みつと出会う。ボクは情欲を、みつはボクに愛を求めた。その目的が叶うとボクは、みつは聖女だと思いながらも棄ててしまう。そして、勤め先社長令嬢と結婚。みつが孤独と貧乏に耐えながらも、一途にボクからの連絡を待っていることを知る・・。自己欲に走った男と、ひたすら愛を貫く女を、遠藤周作は見事に描き上げた。2015/06/06
ω
49
タイトル通り、男が女をゴミのように棄てるω 「人生では、他人にたいするどんな行為でも、太陽の下で氷が溶けるように、消えるのではない」「他人の人生に痕跡を残さずには消えない」つまり、無かったことにはならんと言うこと。すんばらしい小説。2021/02/14
GAKU
38
久しぶりに遠藤周作さんの作品を読みました。おバカさんのガストン同様、ミツは遠藤周作氏が思い描くキリスト像ではないかと感じました。他の作品同様こちらも良い作品でしたね。 2024/07/25
aika
37
淀んだ水溜まりに呑み込まれていく、降りしきる雨粒。家庭環境にも容姿や要領のよさに恵まれず、なけなしのお給金で困っている人を助けてしまうほどお人好しのミツが経験した、たった一度きりの恋。それは痛みを強く伴い、大学生・吉岡の手酷い仕打ちにも、愚かとも思えるほどにあまりにもひたむきで…傍から見ると悲劇的ともいえる運命をたどりながらも終生吉岡のことを想い続けるミツの心を思うと、嫌悪せざるをえない吉岡が、ふとした瞬間に彼女のことを思い出し、彼の中にミツが確かに息づいているのが余計に、どうしてもやるせなく感じます。2024/10/14




