内容説明
消された記憶と謎の都市伝説に迫るミステリ
彼はこの世界から消されてしまったのかもしれない――。
メジャーデビューを夢見て高校卒業と同時に上京した佐川夏実は、吉祥寺で毎週木曜日にストリートライブをしている。そんな夏実のバラード〈不在証明〉は、彼女のおぼろげな記憶の中にいる彼氏を歌った曲。彼との思い出が断片的によみがえることもあるし、ツーショット写真も手元にある。だが、写真を見ても夏実にはそれが誰なのか名前さえわからず、写真を撮ったときの記憶もなかった。
これは恐ろしく“都市伝説的”な事態だ――。
吉祥寺の恵晟大学で「都市伝説研究会」というサークルを主宰する伊神雄輝は、世の中に流布する数多の“伝説”の真相を究明していた。最近もっぱらの話題は、「イレイザーヘッド」により記憶を消されるという都市伝説だったが、あるとき雄輝の携帯に奇妙なソフトが届く。そのソフトを使えば、誰でも「理想の人物」を生み出すことができるという。
めくるめく展開と謎解きのスリル、そして予測できない結末が待ち受けるミステリ長編。夏実が歌うおぼろげな記憶と、雄輝が追う謎の都市伝説がシンクロし、やがて二人の人生を大きく揺り動かしてゆくとともに、内包された壮大なテーマが明らかに!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
34
主人公の夏実が格好いい。女性ミュージシャンが主人公の小説って、プロに近づけば近づくほど格好いいと思うのです。反発しながらも興味深く読みました。以下コメントで、気になるところ、結構辛口に書いています。2024/12/15
ちょこまーぶる
27
都市伝説と言われている話の中で、いくつかは現実があるのだろうか?この話は、そんな都市伝説が現実の世界で存在していて、その「理想の人物」を生み出すソフトの話である。人は、誰もが理想の人物を自分で作りたいと言う想いはあると思うが、この本のように既に存在している人を書き換えると言う行為には恐怖すら感じ、考えさせられた本であった。もしも、こんなソフトが出回ったら多くの人が飛びつくのではないだろうか・・・破滅の一途となるだろうな。最期に主人公の夏美がメジャーデビューした事だけが救われた。2013/12/19
ひめか*
26
単行本が面白かったので、文庫で購入し再読。人の記憶を自由に書き換えられるソフトを巡るSF。いないはずの人物の断片的な記憶を持つ、ミュージシャン志望の夏実と、都市伝説研究会の雄輝を中心に真相を追う。理想の恋人を作り出す代わりに、存在していた人が消されて、関わる人の記憶の中から消される。そんな世界はあってはならないと私も思う。記憶に苦しむ夏実を救っても、雄輝との思い出も消すなど、夏実は望んではいなかったと思う。アドミニストレーターはずっと孤独と闘わなければならない。正義感と切なさで、ある意味余韻が残るラスト。2023/07/06
佐島楓
18
最初は少し不思議なラブストーリーかなと思っていたのですが、だんだんと物語に取り残されるというか、置き去りにされるような感じになってしまい、とても残念でした。そんなに今の若者は、ネットの情報を簡単に信じ込んでしまうのかなぁ。そこが引っかかってしまって、どうもいまひとつ・・・。夏実ちゃんのキャラクターはまっすぐで好きですし、面白くなくはなかったのですが、期待度が高かったのでちょっとだけ「うーん」となりました。2013/06/20
緋莢
16
高校時代に付き合っていた彼氏が突然いなくなる。死んだ、とか失踪ではなく、さいしょからいなかったことになっている。その人の、記憶はおぼろげだが、一緒に写っている写真はある。そんな想いを不在証明という歌にして、路上で歌う佐川夏実。一方、大学のサークルで、都市伝説を調べている伊神雄輝はイレイザーヘッドという国際的な秘密組織が、不都合のある情報や事実を知ってしまった人を処理(続く 2019/10/10