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内容説明
シチリア出身のノーベル賞作家が、突然訪れる「人生の真実の瞬間」を、時に苦々しく、時にユーモラスに描く短篇集。硫黄鉱山での重労働の果てに暗い坑道を抜け出ると……静かで深い感動に包まれる表題作、作家が作中の人物たちの愚痴や悩みを聞く「登場人物の悲劇」、愛犬への奇妙な衝動が抑えられない男を描いた「手押し車」、ケチな領主と頑固な職人との意地の張り合いがおかしい「甕」など15篇を精選収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
147
私はこの本は、先日絵本で「甕」を読んで原作がこの作家ということが分かったので図書館から借りてきました。15の短編が入っていて、イタリアのシシリー島というイメージからすれば明るい作品が多いと思いましたが、結構暗いものもあるのですね。印象に残る短篇が多かった。最後に作者についてのかなり長い解説があり参考になりました。別の作品も読みたいですね。2016/03/05
nobi
95
書かれたのは20世紀後半か?と思うような15の短編。どこか救いようのない無常観漂う心象風景が多い。半分ほどは20世紀初頭。だったら隣のフランスならべルエポックのはず。そんな新しい文化潮流、新しい世紀への期待感は微塵も感じられなくて現代の不安感を先取りしたような。というより無慈悲さとか狂気願望とか人間の暗い面が夢遊病的に戯画的に描かれる。それは当時のシチリアの状況も、作家自身の家庭の不幸からくる閉塞感も影響しているよう。時に足下を掬われるような結末。かと思うと表題作のような最後が。だから短編は気が抜けない。2019/06/02
マエダ
72
ピランデッロにとっての短篇は、どのような手法を用いたら登場人物がもっとも生き生きと描けるのかを探求するための「開かれた実験場」だと言う指摘があるほど、人の個性がよく描かれている。2019/04/04
藤月はな(灯れ松明の火)
49
どこか既視感のある鋭く、抉ったリアリティのある物語。表題作はラストに至るまでの簡単な一言で片付けられそうでいて根深い描写が痛ましい分、最後のささやかな希望にほっと息をつけます。「ミィツァロのカラス」は横光利一の「蠅」に、「フローラ夫人とその娘婿のポンツァ氏」は芥川龍之介の「藪の中」に、「ある一日」は各地の「姥捨て山」に被ります。「取り換えられた子供」の新しい子供になるとかかりきりになってほっとく親の性質に苦笑。それにしても「甕」が幼い頃、「むかでどんのわらじ」の絵の人の絵本で読んだ気がしてしゃぁない・・・2013/06/02
miyu
35
「カオス・シチリア物語」の、ルイージ・ピランデッロ短篇集。一読しただけで「この人、なんか病んでるじゃ?」と思ってしまうほどのネガティブさ。ストーカーもどきのドンヨリした奥さんの視線から逃れられないから苦しいんだよとか、破産して何もする気にならないけど死ぬにも金かかって家族に悪いから、いっそ自分で三途の川まで渡るわだの、愚痴っぽさ全開。もうほんと、私の苦手なタイプの話なのだが、それでも嫌いになりきれないのは、自分を飾り立てることなく熱く嘆いてるからかも。ほとんどが実生活に基づいてる話のようで身につまされた。2014/10/03
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