内容説明
大坂城落城により天下を握ったはずの家康。だが、信濃忍法を駆使した5人のくノ一が秀頼の子を身ごもっていると知り、伊賀忍者を使って千姫の侍女に紛れたくノ一を葬ろうとする。妖艶凄絶な忍法帖。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
266
よくよく考えたら、Vシネマの原作な訳で、知名度という点では、忍法帖シリーズの中でも頭一つ抜けているのか。忍者って、人里離れた山奥で、エロいことばっかり考えてる人たちのことなの?と、既成概念が多いに揺らぐ、スケベ縛りの忍法合戦。最初の、くノ一化粧は、暗中模索していた感があるが、天女貝からだんだんと筆がのってきて、やどかりや羅生門などは、誰が何の必要に駆られて編み出したんだよ!と突っ込まずにいられない。残念な点としては、ラストのオチのためとはいえ、丸橋の途中参戦が、物語に水を差したように思える。2022/08/16
ねりわさび
88
昭和三十五年に発表されたニンジャ活劇小説。5人のくの一と敵対する忍者達がそれぞれの密命を帯び縦横無尽に闘う。という骨子の話ですがエログロ描写が多く読みづらい。ラストは後の傑作、魔界転生に登場する人物の前哨が描かれているのが興味深い。表紙デザインは田島昭宇によるもので現代的な装丁になっている。ニンジャものがお好きならお勧めします。2022/08/20
ehirano1
79
設定がエグいSFアクションエロ小説。炸裂する忍法は9つで、もうどれもこれもがネーミングから中身まで読んでのお楽しみ、色々な意味で。特に、忍法「筒涸らし」のネーミングはもはやお店のオプションレベルではないかとwww。2024/05/19
春一番
43
凄絶。生と死のむせるような薫り高ぶる男と女の忍法合戦。最初、僕はくだらないエロ話を笑いながら読んでやろうという算段だった。読み進めるうちにその笑いはひきつった。いや、その奇想の悪趣味さにではない。女たちの壮絶な覚悟とその生と性を有らん限りに振り絞って繰り出す忍法の凄まじさにこれは真剣に読まねばバチが当たると思ったからだ。ラスト数ページの怒涛の最期、女の意地と執念をまざまざと見せつけられ、呆然とする他なかった。山田風太郎はこれを冗談で書いたわけではないだろう。女性に対する畏敬の念が山田にこれを書かせたのだ。2025/04/24
ぐうぐう
35
タガが外れている。ゆえに、エログロが炸裂する『くノ一忍法帖』は、現代の視点から見ると目を背けたくなる描写が多い。しかし山田風太郎は、読者ウケを狙ってエログロを炸裂させたわけではないだろう。自らが発明した「忍法」のその可能性を試そうとし、さらにはエンタメの可能性すら試そうとした結果、タガを外したのだ。なおかつ山風は、家康対千姫の構図を、伊賀対信濃の忍法争いとし、その構図はつまり、男と女の戦いという図式であることをあからさまにするために、性技を象徴する忍法としたのだ。(つづく)2024/01/29