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内容説明
晩年、孤独を強いられたルソーが、日々の散歩のなかで浮かび上がる想念や印象をもとに、自らの生涯を省みながら自己との対話を綴った10の“哲学エッセイ”。ここにはあの“偉人ルソー”はいない。迫害妄想に悩まされたのち訪れた平穏のなかで書かれた、ルソー最後の省察。「思索」ではなく、「夢想」に身をゆだねたその真意は? 他作品との繋がりにも言及した中山元氏による詳細な解説が付く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
85
以前、ヒュームとルソーが決定的な関係破綻するまでの書簡を紹介した『悪魔と裏切り者』を読んでいたのでこの書を描いたルソーの心境に想いを馳せました。自然に対する感嘆や名声や世間体を気にしなくなってからの伸びやかさは清々しい。後、いつも挨拶してくれる少年に対しての習慣が義務化してきている事への嫌気や自分が子供好きじゃないからこそ、子供を孤児院に入れたというエピソードにはドキッとしたり。でもルソーは相変わらず、「自分は悪くない!悪いのは自分を貶めた奴等だ!」主張を繰り返していてちょっと、笑うしかないですね^^;2017/12/26
佐島楓
68
全く知識をインプットしない状態で読んで、違和感があったので解説に飛んで納得。ルソーの当時置かれた社会的な状況がわからないと、ちょっと理解が追い付かないところがある。ルソーは自己分析に長けた人だと思うけど、同時に他者に理解されたいという図抜けた欲望があったのだろう。そうでなければ物は書かない。内省的な人間ならこの傾向はあると思う。それが夢想にとどまらず哲学に発展しているから、こうして現在も読み継がれている。2019/08/06
molysk
64
フランス革命に先立つこと十余年、ルソーの晩年。著作が焚書となり、逃亡を重ねて迫害の妄想に囚われた末に、ようやく得た静謐のとき。ひとり散歩の道すがら、ルソーは自らの生涯を振り返る。壮年から老年へ、流浪の生活を経て変わったもの。理性的な思索から情緒的な夢想へ。他者との対話から自己との対話へ。自然への支配から自然との調和へ。まるでルソーの西洋思想が、東洋思想の彩りを帯びるような変遷。また、誰からの理解も望まないと記しつつも、やはり誰かに分かってもらいたいという気持ちも隠しきれない、そんな人間くささも感じさせる。2023/02/26
マエダ
62
自分の夢想がすべての人にとって読む価値のあるものであると考えるルソー。本書を読み自分にも密かな夢想の方法と、他人には語らない大切な思い出があることに気づくと著者は言う。2018/11/07
かわうそ
49
『そもそも、学問が人を幸福にしたという話はとんと聞いたことがない。私が求めているのは、単純で気負わない、ただの娯楽であり、苦しまずに楽しめるもの、不幸な境遇を忘れさせてくれるものなのだ。』162 ルソーの学問に対する一貫した批判的な態度がここにも表れています。彼の実質的なデビュー作である『学問芸術論』でも学問や芸術が人間を画一化し、化けさせ不自然にさせると批判していました。また、『エミール』で表明されたような自然主義的な傾向が明確に示され五感で捉えられる快楽にしか価値を置かないとまで言ってのけるわけです。2023/07/07
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