ハヤカワ文庫NV<br> 太陽の黄金の林檎

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ハヤカワ文庫NV
太陽の黄金の林檎

  • ISBN:9784150118709

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内容説明

冷えきった地球を救うために太陽から“火”を持ち帰ろうとする宇宙船を描いた表題作「太陽の黄金の林檎」、灯台の霧笛の音を仲間の声だと思いこみ、海の底から現れる古代生物の悲哀を綴った「霧笛」、タイム・トラベルの危険性を鋭くえぐる「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」など、SFの抒情詩人たる巨匠の幻想と詩情にあふれる22篇を収録した短篇集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

rico

102
陰鬱な雨の日が続いた10月。こんな季節にはやはりブラッドベリを読みたい。この作品集はダークファンタジー成分は控えめ。刺青の男もカーニバルも出てこない。皮肉たっぷりのユーモア、大人を振り回す少年少女たちの伸びやかさと危うさ、社会への風刺や鋭い批評精神。巻末の表題作は苦難の後の輝かしい勝利を描き、まさにアメリカンドリーム。1番魅かれたのは、孤独と哀しみが胸にせまる「霧笛」と、美しく理不尽な終末を描く「ぬいとり」。様々なブラッドベリを堪能しました。亡き中島梓さんの解説に、また涙。良い読書でした。2020/10/18

セウテス

92
独特な文体というか、感覚的な表現というか、詩を読んでいる様な思いがする。ミステリの中にハードボイルドが出て来た様に、SFの中にブラッドベリが存在するという感じか。「人殺し」などはタイトルは意味深で、正常な人の方が排除されてしまう、管理社会への皮肉の表現方法が面白い。「サウンド〜」は、タイムトラベルの問題点で、星新一作品を思い出す。しかし此方は、恐怖をリアルに感じる。今あらためてブラッドベリ作品を読むと、何処か違う世界に入り込んだ様な気持ちになる。文字を通して、メタバース空間を体感した様な読後感、不思議だ。2022/10/28

えりか

55
レイブラッドベリを読むと、気持ちがすーっと和んでいくから不思議だ。恐らく、彼の書く物語の哀愁であったり、切なさや、もの悲しさ、それでいて、優しさのようなものが、コチンコチンの心を解きほぐしてくれるからなのだろう。なくしてしまったものへの哀愁、世界が変わっても変わらないものへの安堵、狂おしいほどの憧れ、彼の書くSFは近未来においても、変わらない私たちの普遍的な心情を描いてみせてくれるから、私はいつだって彼に癒さるのだ。「霧笛」「山のあなたに」が好き。「霧笛」の恐ろしい怪物の中にある孤独と悲しみがやるせない。2018/05/02

ふう

50
新聞に「萩尾望都が影響を受けた作品」とあったので、どんな不思議な世界が描かれているのだろうと楽しみに手にとりました。『華氏451度』と同じ作者だと知ったのは、恥ずかしながら読み終えた後。22の短編が収められています。人の力や知恵が遠く及ばない、時間や自然の果てしない流れ。そしてその流れの中の孤独や不条理。一話めの『霧笛』から、深く静かな世界に惹き込まれてしまいました。 表現がとてもいいなと思うところもたくさんありました。「コーラは小道を走った。世界はコーラといっしょに走った」(山のあなた)コーラの喜びが2014/05/10

ちえ

46
地球上の、火星の、宇宙空間のどこかの場所で起きたほんの小さな出来事。ブラッドベリの手にかかるとガラス玉の中の世界のように永遠に命を持ち続ける。読みながら思い出すのは私自身の中にある小さいけれど忘れたくない事。思い出すだけで涙が出そうになるその一つ一つを同じ様に永遠に留めておきたい。ブラッドベリと切り離せないジョセフ・ムニャーニのイラストがまた幻想的。今の私には名作「霧笛」は勿論、「四月の魔女」「目に見えぬ少年」「金の凧、銀の風」「二度と見えない」「ぬいとり」「草地」「ごみ屋」「歓迎と別離」が心に残った。2019/10/29

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