内容説明
日本語の「幽霊」を意味する中国語「鬼」は、現代の台湾でどのように語られ、恐怖の対象になっているのか。海を渡って日本から台湾に広まって台湾流にアレンジされた怪談・怪異を実例=怖い話とともに紹介して、台湾のオカルト事情に迫る。
目次
序 章 学校の怪談の背景
第1章 陰陽眼の少女
1 風水と陰陽眼
2 女子寮の怪異
3 八字が軽い人
4 鬼が視える人生
第2章 「「鬼」の絵を描いてみてください」
1 妖怪を示す記号
2 顔のない鬼、舌を出す鬼、目を見ひらいた鬼
3 レイ鬼とキョンシー
4 日本の幽霊と「貞子」
第3章 学校に棲む鬼たち
1 トイレの花子、海を渡る
ほか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
39
久々の再読。「学校の怪談」が、軍隊の話とともに、近代の制度によってはじめて発生する話であること。日本と酷似した物語が台湾でも採集されている点に、50年にわたる植民地時代の影響の深さを考えさせられる。単なる「親日」と考えてはいけないことを痛感。東日本大震災のとき、台湾の学生さんが遠くから、無償の善意として慰霊を行った話には、思わず身のひきしまる思いがした。2017/05/15
へくとぱすかる
31
台湾の学校が日本と非常によく似ているというところから、「学校の怪談」の存在が、並行するように存在する、ということに驚く。著者の考察は、その似ている理由をかつての植民地支配に求めているが、台湾のおかれている状況はさらに複雑で、支配者の変転の影響が大きいのが、似て非なるところ。ともあれ、文化のちがいから、パラレルワールドを見るような感覚で、もうひとつの「学校の怪談」の世界をみることができる貴重な記録である。2014/03/05
HANA
26
一番感動したのは東日本大震災に際しての大学生達の行動。彼らの善意に感謝を。内容は台湾での学校の怪談と、そこに日本文化が与えた影響を探っている。台湾では鬼がまだ日常の一部としている事と、それを見る事のできる人にまずは羨ましくも新鮮な驚きを覚える。次いで目玉の学校の怪談へ。トイレでの怪異とか動く孫文の銅像とか、ここでは日台共通するものが多いのは面白い。とくに台湾の小学生を対象としたこの手の調査は初めて読めた。他にも台湾版こっくりさんや日本の軍人の幽霊の背後とか、とにかく興味深い題材ばかりの一冊でした。2012/08/30
アカツキ
13
台湾の学校の怪談や体験談を紹介、オカルト文化と併せて解説した本。陰陽眼(霊視能力)、鬼(幽霊)の話が面白かった。鬼を見る才能を封印するだけでなく、お祈りで授けてもらえるらしい。子どもにそういう才能を授けようとする家庭もあるようだけど、どんな背景があるのかな。怖い思いをさせるだけのような気がするけれど…?死んで鬼になりたい人向けファッションがあったり、日本にはない独特の話が楽しい。2025/05/31
mittsko
9
台南の大学教員である伊藤先生(民俗学、説話研究)が、学生の謝さんの修士論文を大幅にリライトして完成させた本(一部、別の学生らの卒業論文を元にしている!)。日台で似ているのに違う、違うけど同じ、伝播したのに違う… 文句なしに面白い! 個別の怪談が面白いのは当然だが、それを配置し解説をくわえる筆者の手心が、実に堂に入っている、恐れ入りました(。・ω・。) なお、タイトルが「鬼」譚となっているのは、中華圏の「鬼」(幽霊)信仰が 日本ととても似ている台湾の「学校の怪談」に独自な性格をあたえている、との主張を示す。2017/11/27