内容説明
独ソ戦を予言し、対米参戦の無謀を説き、和平工作に砕身した陸軍武官・小野寺信。同胞の無理解に曝されつつも、大戦末期、彼は史上最大級のヤルタ密約情報を入手する。ソ連の対日参戦近し――しかしその緊急電は「不都合な真実」ゆえに軍中枢の手で握り潰された。連合国を震撼させた不世出の情報戦士、その戦果と無念を描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
96
この本の著者はもともと産経新聞の記者で最初は自身の出版社から出す予定が、中に書かれている人物が時の政権重鎮などと親しいということでお蔵入りになったとかいうことを聞いています。その人物こそがこの主人公の情報を握りつぶした本人で、かなりの地位にまで上り詰めた人です。佐々さんという危機管理の警察庁の人(浅間事件を指導した)もこの人物は右翼とは言っているが実際はソ連(当時)シンパで情報を流しているので逮捕したいとまで言ったのが後藤田さんが頭を縦に振らなかったということです。もっと読まれてもいいと思うのですが。2017/09/08
kawa
38
労作。ソ連の第2次大戦のドイツ降伏から3ケ月後の日本への参戦を決めたヤルタ会談。この密約は、在ストックホルム駐在武官・小野寺信氏の優れた諜報網にキャッチされ大本営にもたされた…。その大本営は、ソ連を仲介者にたてる策を早くから試み、独善的に立てた作戦から外れた情報を頑なに拒絶する姿勢を貫いて、結果として敗戦直前の無益な戦いで多大な被害をまねく結果となった。大本営の優秀な参謀が何故にそのような失敗をしたか、確たる理由が不明なことは?なのだが、歴史の悲劇としてテイク・ノートしておかねばならない。(コメントへ)2021/11/19
姉勤
36
日露交渉を前に。エリートを集めるとバカになる。本書の情報士官、小野寺信少将の超スパイ級活躍を光とするなら、影というか闇は”大本営”の一神教的理念のもとの、現実の認知を拒む、いわば人間の陥穽。戦時にあっては著しく、民族絶滅の可能性を計るほど、近代兵器が加わった際の「凶悪」さ、を当時の人類は知らなかったのかもしれない。昭和天皇の聖断によって免れたのは日本的理念の一縷の望み。失敗は正しく反省すれば教訓になる。中韓の反省が足りないとの物言いは、ある意味正しい。2016/11/19
ロッキーのパパ
16
まるで良質なエスピオナージ小説を読んでいるみたいな感覚だった。堀栄三や本書の主役の小野寺信など日本軍にも個人としては優秀なインテリジェント・オフィサーがいたことを再認識できた。彼らが集めた情報を活用できなかった組織が問題だったんだね。2012/12/29
Honey
11
すごい!労作!! 小野寺信とその周辺、時代、日本、アジア、ヨーロッパ…全方向からの検証的著作です。しかも焦点を当てた主だった人物のそれぞれのキャラクターがかなり詳細で興味がそそられました。 自分の基礎知識不足・消化力不足を感じつつも、大変面白かったです。もっともっと広く世間に知られてほしい内容です。 ついでに、ポーランドのことも少しわかった気がして個人的にタイムリーでした♪2019/04/13