- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
ことばを通して現実があらわれ、人間があらわれ、共同社会があらわれ、宗教があらわれ、芸術があらわれるという展望がなかったら、ことばを論ずる魅力はおそらく半減することだろう。――著者は「あとがき」でそう断じる。人として存在すること、社会のなかに在ることと、否応なくむすびついた「ことば」とはなにか。繊細でしなやかな哲学的洞察。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひろ
2
柳田国男を引いた沈黙と共同規範への考察が面白かった。柳田は村落における沈黙と都市におけることばについて、前者は互いが親密であるためことばを必要とせずに共同規範が成立し、後者は一定の距離が互いにあるため共同規範成立にことばが必要とするが、筆者は都市には電車内のように互いの無関心を象徴する沈黙があると言う。そして都市における沈黙の一歩手前にあったことばをなおも発するのが詩人であり、ことばを内に秘め自我を痩せ細らせる圧力からの解放を志向することで、沈黙とことばの境目で思想的拠点が立ち上がる。2013/05/30
atikimm
1
これには感銘を受けた記憶があるが、みな忘れたな…元本は何処へ? 積ん読にしとくか2013/10/09
鯨、或は山田
1
在野の研究者らしい、闊達な筆致で先達にバンバン切り込んで行く。柳田國男と時枝誠記の言語観を下敷きにしながら、ハイデガーやソシュール達を薙ぎ倒していく。つっても親本の出版が1978年の出版だからか、デリダには一切触れられていなかった。とはいえまさに書き言葉と話し言葉との対立を描くさまは日常ではない所でことばを扱おうとする人間にとっては非常にためになるはずである。2013/06/10
さえもん
0
言霊信仰や差別的用語の使用など様々な言語に関するテーマをここまで構造的に説明した本は他に読んだことがない。ことばを使用していること自体が平等の観念を導くこと、言語は本質的に体験をそのまま表現できるようにはなっていないこと、話し言葉と書き言葉は前提となっている条件が異なりそれぞれに機能があること、は常に肝に銘じておきたい。 2023/02/14