内容説明
私の本当の父親は、誰ですか――見知らぬ他人の精子を用いるAID(非配偶者間人工授精)を選択した家族、医師、精子提供者らに徹底取材。決断までの夫と妻それぞれの葛藤、生まれた子に事実を告げる困難、そして“秘密”を知った子どもたちの衝撃。命の真相をめぐるドラマを克明に描き、科学技術がもたらす幸福とは何かを問う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Humbaba
8
科学技術の発達によって,子どもを持つための選択肢は増えた.しかし,それによって幸福になれるかどうかはまた別の問題である.親は自分の意志で子どもを持ったとしても,遺伝子上の親の顔がわからないというのは,子どもにとっては大きなストレスになる可能性も高い.2013/05/08
槙
5
心に重い物が残る一冊だった。これから結婚する人は読むと、家族になるってことに対していろいろ参考になるんじゃないかと思う。遺伝的疾患や近親婚への対応を考えれば産まれた子への告知や提供者の情報の開示は必須だとしか考えられないけど、秘密にすることを医療関係者が積極的にすすめていた時代があったことが特にショックだった。子供の人生はあくまで子供自身のもので、親が子供が欲しいって言う時に、本当に欲しいものはなんなのかしっかり考える必要があるんじゃないかと思う。2014/06/05
りりあん
4
血の繋がった親子でも違和感というか、考え方や感覚の違いはたくさんある。 それでも、自分の出自がハッキリしているというのは、幸せなことなのかもしれないと思った。 AIDは母親のお腹から生まれているのだから、養子よりもっと近いものなのかと思ってたけれど、隠されているということで家族関係が悪化することもあるという。 不妊治療へのハードルが低くなり、子連れ再婚も多い昨今、家族というものが多様化していることは間違いない。 血縁に甘んじるのではなく、家族は作っていくもの、なのだろう。2014/06/12
まりにゃ
4
子供が欲しいというのは、自分だけの気持ちだけでなく、子供の気持ちにもなってあげないと、かわいそうだと、つくづく思った。 いろいろな不妊があり、不妊治療もいろいろだけど、この本の場合は、男性側に問題がある場合に、他の男性の精子を使う方法。やはり男性にとって、自分以外の精子で奥さんが妊娠しても、なんの曇りもなく、子供に接するというのは難しいのだと思えた。 子供のいない夫婦に、「子供は?」って気安く聞ける人には、是非、読んで欲しい本です。2012/12/05
sun
4
とても印象に残っているのは、子供は誰のものでもない。子供は親のものではなく子供自身のもの。AIDで産まれた子供であっても同じ望まれて埋れてきたいのち。親のエゴではなく、きちんと責任を持っていのちと向き合ってほしい。産まれる前のいのちは自分の意思を伝えられないのだから。不妊治療に携わるものとしてとても難しい問題だと思うけど、社会としてきちんと考えていかないといけない時期になっているんだと痛感した。2012/08/27