内容説明
得体の知れない敵国、日本を丸裸にするため、アメリカはすさまじい執念とエネルギーを費やし極秘に捕虜尋問センターを準備した。暗号名はトレイシー。日本人の国民性、心理、戦術、思想、都市の詳細などについて捕虜たちが提供した情報が、やがて日本の命運に大きくかかわってくる。講談社ノンフィクション賞受賞作。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
36
元NHKスペシャル番組部長、元大正大教授、10年著。講談社ノンフィクション賞受賞作。日本軍は情報より作戦を重視していたが、米軍は捕虜から心理、戦術、思想や軍需施設などを吸い上げ、情報戦の勝利に大きく貢献。「生きて虜囚の辱しめを受けず」を金言としていた日本人であるが捕虜となるとすぐに情報の開示をしてしまうのは何なのだろう。物資、戦略だけでなく心理的にも一枚も二枚も上手だった米軍。その秘密情報を戦後開示してしまう事にも驚かされた。2019/08/31
donboo
15
「トレイシー」日本兵捕虜秘密捕虜尋問所の暗号名。大東亜戦争時に特に重要情報を知っていると思われる捕虜が収監された。皇居、零戦製造工場など詳細なスケッチに驚かされる。尋問官の守秘義務を守り、捕虜が母国で不利益を蒙ることが無いよう人道配慮が多くの情報を聞き出せた要因だろう。トレイシーの存在が公になったのは戦後60年を過ぎた頃。多くの情報を入手し、取捨選択し相手を知り戦略を練る。アメリカは何枚も上手であったということ。今尚、多くの記録がワシントンの公文書館に保存されている。2017/07/13
リキヨシオ
15
日本は軍事力などの「戦術」以上に、情報力を駆使した「戦略」を軽視した。アメリカは尋問した捕虜達から有益な情報を吸出して、日本の内部を丸裸にした。日本とアメリカの差はすさまじいものだったと思う。今まで尋問と拷問と同じイメージを持っていたが本質は異なり、尋問において盗聴や捕虜同士のコミュニケーションなど人間心理を巧みに操る。2016/03/20
glaciers courtesy
6
「失敗の本質」を読んだ時にも思ったけど、太平洋戦争は勝ちようの無い絶望的な戦争だったことを痛感する。国としての基礎体力に大差があり、その上に戦略で劣り、この「トレーシー」で紹介される戦術の部分でも完敗している。アメリカのプラグマティズムというのは現代を勝ち抜く最強の方法論だということなのだろう。読み物として面白いかというと僕はそうは感じなかった。個別のエピソードは消化不良だ。しかし今も日本は情報公開という面でアメリカに大きく後れを取っているという著者の指摘には同意するし、この本を読む価値は十分あると思う。2015/07/14
遊々亭おさる
6
太平洋戦争中にアメリカで極秘に進められた日本人捕虜に対する尋問計画、暗号命はトレイシー。彼らは表面的にはジュネーブ条約に則り、あくまで紳士的な態度を装い、あらゆる手管を駆使しながら日本国と日本人を丸裸にしていき、戦争の完全勝利に貢献していく。その任務は血は流れぬが机上での熾烈な戦闘だったのだろう。日本の完全敗北の真の要因は、実は圧倒的な軍事力の差などではなく、情報に対する意識の差ではなかったのか。そして今も日本は、情報という戦争に負け続けている。2013/10/13
-
- 電子書籍
- COMPANYースターダムな仲間たちー…
-
- 電子書籍
- 転生皇女は人魚姫でした【タテヨミ】第5…
-
- 電子書籍
- 踏んだり、蹴ったり、愛したり【分冊版】…
-
- 電子書籍
- この夜が明けたら【分冊】 1巻 ハーレ…
-
- 電子書籍
- ガラスの家【分冊】 1巻 ハーレクイン…