内容説明
清朝最盛期の乾隆帝に宮廷画家として仕えたイタリア人宣教師ジュゼッペ・カスティリオーネ。現地名「郎世寧」として中国絵画史にも大きな足跡を残した彼は、離宮の狭い一画に十二支をかたどった噴水と西洋式の宮殿を造るよう命じられ、仲間の宣教師と心血を注ぐ……。西洋の目が見た皇帝一族の光と影。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
noémi
7
作者は専門が中国文学の学者だ。漢語は縦横無尽にこなせるゆえ、「山月記」のような文体でもおかしくないが、あえて恬淡とまとめた文章は、庭というテーマに沿っているように思える。カスティリオーネをはじめ、西洋人修道士には理解にあまる清王朝。その頂に立つ乾隆帝。寡黙でありながら尊大。「神」のごとき権力を持つ。修道士たちは彼をひたすら畏怖するしかない。その陰には第三皇子のミステリアスで悲しい事件が隠されていた!皇帝とは親子の情を絶ってまで国体を固持させなければならないものなのか。ぐっと息を飲まずにはいられないラスト。2012/08/05
(k・o・n)b
5
『蒼穹の昴』を最近読んでいたので、清朝繋がりということで本棚から発掘。蒼穹〜では帝とカスティリオーネは信頼関係を育んでいたが、本作では帝はカスティリオーネら宣教師達の生殺与奪の権を握り、好みの作品を作るように一方的に命じていて、随分と趣が異なる(こっちの方が史実に近そう)。布教を使命としているのにままならず、皇帝の言いなりで「紛い物」の作品を作る日々は何とも遣る瀬無い。そんな中カスティリオーネは細やかで切ない「復讐」を行う。詳細な芸術史の記述が続く上に時系列がコロコロと変わるので若干読むのがしんどかった…2019/04/24
gollum
4
「奇景の図象学」はとてもおもしろくて知的興奮に満ちていたが、この本は小説のプロットととしては物足りなくて残念。随所にちりばめられた絵画・庭園にこめられたシンボリズムは楽しいのだが。2012/11/13
rinakko
3
とても魅了された。布教も儘ならぬまま、乾隆帝に宮廷画家として仕え続けた宣教師カスティリオーネの、数奇でもの哀しい物語。彼が制作を命じられたのは様々な趣向の絵画に留まらず、噴水を西洋楼を、ひいては西洋庭園の設計を手がけることとなる。だが、切れっ端の如き場所に本来の庭園が実現するべくもなく、帝の偏った意向に沿う壮大な紛い物でしかない…。不可解で残酷な神のように君臨する、乾隆帝の造形が素晴らしい。西洋を憎むと同時に、カスティリオーネたちの俊才を愛でた。その遥かな消失点を見据える眼差しは、あまりにもはかり知れない2012/08/18
エドワード
3
イタリア人の宣教師にて画師のカスティリオーネと清の最盛期の皇帝乾隆帝との出会い。西洋式庭園を造る命を受けたカスティリオーネは、噴水、洞窟、迷宮に彩られたエステ荘やローマの壮麗なバロック庭園を想い起こす。彼は齢七十、清に滞在すること五十年だった。女真族の征服王朝である清朝は、日本人の私から見ても風俗習慣がおどろおどろしい。乾隆帝の専制君主ぶりも大変なものだ。キリスト教を忌み嫌いながら、西洋の文化文明を無視できない皇帝。次々と世を去る脆弱な皇子たち。落日の中華帝国の行方を暗示するかのようだ。2012/07/23
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