内容説明
戦後日本でヒロシマは人々にいかに欲望されたのか。新聞・雑誌や映画、マンガ、観光を対象に、反戦・平和、被爆体験、原水爆禁止、反原発、原子力の平和利用など、時代・場所によって異なるヒロシマ像やその社会背景、そしてメディアの力学を多角的に読み解く。『はだしのゲン』の中沢啓治、『夕凪の街 桜の国』のこうの史代へのロングインタビューも所収。
目次
プロローグ――複数の「ヒロシマ」とメディアの力学 福間良明
第1部 広島の「ヒロシマ」
第1章 「被爆の明るさ」のゆくえ――戦後初期の「八・六」イベントと広島復興大博覧会 福間良明
1 「八・六」と祝祭
2 「祝祭」の翳り
3 「平和利用」への希望
4 おわりに――「ヒロシマ」の生成と変容
第2章 大衆文化としての地方文芸と被爆体験――詩誌「われらの詩」「われらのうた」の文芸的公共性 山本昭宏
1 怒りの「ヒロシマ」、平和の「ヒロシマ」
2 軍事利用の記憶と平和利用の夢
3 おわりに――サークル誌が紡いだ議論
第3章 連続と断絶の都市像――もう一つの「平和」都市・呉 上杉和央
1 平和産業港湾都市という都市像
2 「れんが」と大和ミュージアム
3 おわりに――「平和」都市の異同
第2部 ポピュラー・カルチャーの力学
第4章 マンガに描かれた「ヒロシマ」――その〈風景〉から読み解く 吉村和真
1 中沢啓治が描いた「ヒロシマ」
2 学習マンガが描いた「ヒロシマ」
3 こうの史代が描いた「ヒロシマ」と「廣島」
4 おわりに――より豊かな「ヒロシマ」の〈風景〉を求めて
第5章 〈被爆国民〉の「悲願」と「怨嗟」――『ゴジラ』と「原爆映画」をめぐって 森下 達
1 一九五〇年代の『ゴジラ』評価と「原爆映画」
2 一九八〇年代の『ゴジラ』評価と「原爆映画」
3 おわりに――形象と現実
第6章 被曝変異譚への欲望――「ウルトラの世界」と放射線 杉本淑彦
1 前史としての怪獣・怪奇映画――一九五〇年代―六〇年代前半
2 初期『ウルトラ』シリーズの被曝変異譚
3 被爆星人事件(一九七〇年十月)
4 ポスト「被爆星人事件」
第7章 廣島、ヒロシマ、広島、ひろしま――広島修学旅行にみる戦争体験の変容 山口 誠
1 広島修学旅行と東京が出会うまで
2 「ヒロシマ」修学旅行の誕生――「上平井方式」とその「改良」
3 三つのガイドブック、四つの広島――「非核平和」と「ヒロシマ」の連動
4 「ヒロシマ」の風化――江口保の「ヒロシマ」批判
5 「ヒロシマ」のジレンマと向き合うために――戦争体験の風化と「追体験」の可能性
コラム 距離・制限・タブー――日欧「ヒロシマ」イメージの隔絶 ディック・ステゲウェルンス
第3部 作家インタビュー
解題――「ヒロシマ」を描いた二人の漫画家吉村和真
[インタビュー]中沢啓治――戦後の社会史・メディア史における『はだしのゲン』
[インタビュー]こうの史代――非体験とマンガ表現
エピローグ――「ヒロシマ」の道は続く 山口 誠
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