内容説明
人は必ず死ぬ。にもかかわらず、現代の日本人は長生きこそ善とばかりに、死を不浄なものであるかの如く忌み嫌うようになってしまった。しかしかつての日本人は死生観をもって生き、だからこそ輝く晩年を送ったのではなかったか。良寛や芭蕉から鴎外、漱石、子規、茂吉、賢治まで、先人たちの末期を読み、彼らの「涅槃」を想う。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
7
死を見つめながら生きることとは何かを、3.11後の日本を見つめながら宗教家が思索する。人間の致死率100%と言ったのは、養老孟司だったろうか。このことは自明のことでありながら、自分が死ななければならないということを納得できないところに人間の懊悩がある。自分自身をいかに平穏のうちに始末するか、その納得の最大のカードが自然に帰るという「涅槃願望」にあるという。うらうらとした気持ちで「花より命をぞなお惜しむべき待ちつくべしと思ひやはせし」と詠んだ西行の心境に至るには、まだまだ遠い。2013/01/20
AZUMAX
4
「髑髏となってもかまわない」とはまたすごいタイトルである。何も自分がそう思っているわけではないが、人間いつ何が起こるか分からないものである。最近はそのようなことを時々ふと考えるようになった。本書は、先人達が遺した文章(主に死期を目前にしたもの)を取り上げ、著者独自の視点からそれぞれの死への思いや覚悟を解き明かしたものである。そこで読者である我々の、生への執着や死から無意識に目を背ける態度に対して何らかの気づきを与えようとしている。著者本人が高齢ということもあり(その割に今も元気そうだが)、(続く)2012/06/24
頭の中がメルヘンちゃん
3
久しぶりに物語以外で心に響く読み物を読んだ。第二章の冒頭、死小説についてのくだりがとりわけいい。西村賢太の受賞のことばを例に挙げ、私小説を「自分の恥辱を他人事のように記してのけることをめざして滅びの道をゆく、そういう覚悟のすえに踏みきられた小説」と言いきる姿勢に感服する。重く響く良作でした2012/12/29
マウンテンゴリラ
1
一般に知られる著者の肩書きは、宗教学者であるが、本書も含めて、私が知る限りの著作からは、その枠のイメージに納まらない、二つの点が感じられる。一つは、宗教だけでなく、文学に対する造詣も非常に深いこと。もう一つは、死をテーマとした著作が多いことである。このように、宗教、文学、死、といった、近現代に祭り上げられた合理性、生産性といった価値観に真っ向から反するもの、敢えて言えば、非合理的、没生産的、とさえ見られがちなものへの眼差しを重視する作家であると感じている。そこに私だけでなく、有無を言わさず、→(2)2023/05/28
みぃ
0
著名人の死生感を通して死について考えさせられた。 時代背景と死生感は密着していると感じた。 ⭐︎32021/11/04