内容説明
赤いドアの小さな部屋に誘われるように入り込んだ３人の男女。自信あふれる免疫学専門の大学講師・夏木祐子、善良そうな開業医の妻・船出鏡子、そして若く傲慢な売れっ子作家・佐島響。見ず知らずの彼らは、なぜ一緒にこの部屋に閉じ込められたのか？ それぞれが語りだした身の上話にちりばめられた謎。そして全ての物語が終わったとき浮かび上がる驚くべき真実――。鮎川哲也賞作家が鮮やかな手法で贈る、傑作ミステリー！
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
65
原稿を取りに来た編集者に作家が渡した作品。その中では部屋に閉じ込められた三人が、それぞれの来歴を語ろうとしていた…。というわけで作中作というか枠物語で語られる作品。出口がない理由としてはすぐに推測が付いたけど、それぞれの語りでは三人の救いがない嫌な性格が実に上手く機能してるので頁を捲る手が止まらない。真相についてもちょっと無理がある部分感じたけど、作中における彼らの語りがきちんと外部のある一点に収束されるのは上手いなと感じる。単なる飾りではなく枠物語という形式をきちんと活かした面白いミステリでした。2020/09/22
おかむー
49
これはなんとも不思議。『よくできました』。主要な部分が作中作『出口のない部屋』の登場人物である三人の男女の身の上話の形で進行する物語なので、素直にミステリというには非現実的なイメージに引きずられて、現実と創作の境目があやふやになる。時系列に仕掛けがあることはおおまかに予想できるものの、ラストで明かされる三人の繋がりと物語の仕掛けには見事と感心させられた。一般的にイヤミスと呼ばれるであろうこの作品、人間のエゴと支配欲に端を発した歪みが行き着いた先にあったのは『出口のない部屋』だったということなのだろう。2014/04/24
yu
26
ある編集者が、作家の原稿を受け取りに行くところから物語は始まる。 「出口のない部屋」はこの作家が書いた作中作として登場。大学講師、平凡な主婦、若い作家の3人が、ある部屋に閉じ込めらる。それぞれが「キメラ」「歪んだ魂」「不幸のはがき」という章立てで自分の人生を語っていき、どうして部屋に閉じ込められたのかを探ろうとする。 この編集者と作家、「出口のない部屋」に閉じ込められた3人の関係が徐々に明らかになっていくのだが、とにかくその関係性に驚いた。「真の地獄はあなたの心の中に」という帯の意味が怖い1冊。2012/09/08
マサキ＠灯れ松明の火
18
魁出版の編集者･香川が、｢美しい｣と評される新人ﾎﾗｰ作家の仁科千里の元に原稿を受け取りに訪れた所から全ての物語が始まった。千里の新作｢出口のない部屋｣…赤いﾄﾞｱに導かれ、大学講師･夏木祐子、開業医の妻･船出鏡子、若く傲慢な人気作家･佐島響。何の繋がりもないかと思われる3人の男女…なぜ、自分が？と心の中で思う3人…それぞれの接点を探すことが、この部屋から脱出できることに繋がるのではと考え…真の心を隠して、自らの生活をかえりみる3人…接点は…ない…本当に？心の闇に巣くう共通の｢人物｣とは…【続】2013/06/12
coco夏ko10角
16
著者の「無垢と罪」が面白く、他にも読んでみたくてまずこちらを。いくつかの繋がりは「あれ？もしかして…」と気付けたけど、ここまでうまくまとまってきれいに終わるとは思わなかった。ミステリーとしても人間ドラマとしても楽しめました。2014/02/16
