ちくま文庫<br> 〈狐〉が選んだ入門書

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ちくま文庫
〈狐〉が選んだ入門書

  • 著者名:山村修【著】
  • 価格 ¥770(本体¥700)
  • 筑摩書房(2015/08発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480429377

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内容説明

「入門書」とは、原典を理解するための補助をめざして書かれた本のことではない。ある分野やことがらを対象に、一般の読者向けに、平明な文章で書かれているというのは無論のことだが、「入門書」はその書物自体が一個の作品となっていなければならない。各分野の厳選された入門書を紹介する画期的な読書案内。

目次

第1章 言葉の居ずまい(国語辞典に「黄金」を掘りあてる―武藤康史『国語辞典の名語釈』 敬語は日本語の肝どころ―菊地康人『敬語』 奈良の都に交わされる声を探る―橋本進吉『古代国語の音韻に就いて』 人生への問いと文章の書き方―里見〓(とん)『文章の話』
切れば血とユーモアの噴き出る文章術―堺利彦『文章速達法』)
第2章 古典文芸の道しるべ(社会人に語りかける古典入門―藤井貞和『古典の読み方』 古歌を読む分析的知性の強力さ―萩原朔太郎選評『恋愛名歌集』 現代詩をめぐる「楽しい遍歴」―三好達治『詩を読む人のために』 読むことのうれしさにみちた近代小説案内―窪田空穂『現代文の鑑賞と批評』)
第3章 歴史への着地(歴史への抑えに抑えた怒り―エルンスト・H.ゴンブリッチ『若い読者のための世界史』 歴史的想像力の剣さばき―岡田英弘『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』 ブルジョワの二面性を鮮明に照らす―遅塚忠躬『フランス革命―歴史における劇薬』 「記者魂」の躍如としたジャパノロジー―内藤湖南『日本文化史研究』 歴史の直接的な肌ざわり―中村稔『私の昭和史』)
第4章 思想史の組み立て(世相の向こうに「近代」の醜怪をあばく―金子光晴『絶望の精神史』 考えるべきことを考えよという指針―田川建三『キリスト教思想への招待』 思想史からの伝言―岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』 本の「断片」を読みふかめる―内田義彦『社会認識の歩み』 アラビア語とイスラームとの切っても切れぬ関係―井筒俊彦『イスラーム生誕』)
第5章 美術のインパルス(たっぷりとゆたかな「小著」―武者小路穣『改訂増補日本美術史』 江戸絵画の見かたをかえる異色の水先案内―辻惟雄『奇想の系譜』 画家の身にひそむ思想の筋力―菊畑茂久馬『絵かきが語る近代美術』 「名画」という価値から解放された絵の見かた―若桑みどり『イメージを読む』 二十世紀絵画に「感覚の実現」を読む―前田秀樹『絵画の二十世紀』)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あきあかね

17
 「人間はどんなところでも学ぶことができる。知りたいという心さえあれば。」 「狐」のペンネームで日刊ゲンダイに書評を書き続けた著者の本を読んでいると、漫画『MASTER キートン』で出てきた上記の言葉を思い出す。 著者は大学図書館に司書として勤めるサラリーマンでありながら、週に一度の書評の定期連載を20年以上にわたって続けてきた。残業などもある日々の仕事に取り組みつつ、本に対する関心、「読みたい、知りたいというわくわくするような欲求」をよりどころに、豊かな読書の時間をつくりだし、様々な本の魅力と本質とを⇒2019/04/11

田氏

16
それ自体が一個の作品であり、一つの文章世界が自律的に開かれているもの、と定義された「入門書」。ただあたらしい知識を増やすだけではなく、通俗化して当たり前になってしまったものへも新しい見え方をさせるような書物。そのような本を紹介する本書もまた、「入門書」への向き合い方を変えてくれる。入門の文字どおり寺社の門にでもたとえるなら、門の内側をちらと覗いて良しとしていたのを、門そのものにも目を向けさせるような変化だろうか。そうなればそれは、きっと不可逆的なものであるから、変えてしまう、と言った方がいいかもしれない。2022/10/13

tom

9
この本は良書です。著者のいう入門書は、「思いがけない発見にみち、読書の喜びにみちている。そのような究極の読みもの」というものですけど、25冊を取り上げ、どこがすごいのかを解説してます。著者の書きっぷりがいかにも楽しそうで興奮に満ちている。おっ、面白そうだ、読んでみようという気持ちに駆られてしまう。取りあえずは、キリスト教の田川健三、イスラム教の井筒俊彦、美術家の若桑みどりなど、これらを買いに行きます。この著者、書評本も出しているので、楽しみです。2012/06/12

オールド・ボリシェビク

4
著者は<狐>の筆名で1981年から22年半も「日刊ゲンダイ」にて週一で書評を書き続けてきた。本業は図書館司書。宇能鴻一郎のエロ小説目当てに「ゲンダイ」を読んだ私であったが、時折、目にしたその書評に含有された圧倒的な知識には驚かされたものである。50代半ばで亡くなられてしまったが、本書にて初めて、本名を明らかにした。25冊の入門書を紹介している。入門書とはいえ、それ自体がひとつの作品として成立している書物ばかりである。とっつきにくい本が多いかもしれぬ。しかし、読破すれば確実に身になり、肉になるはずである。 2025/02/05

akiu

2
著者が定義する入門書は、原典理解のための手引書の類ではなく、ある分野やことがらに対する、思いがけない発見にみちていて、その本自体がひとつの作品であると言えるもの、とのこと。この定義を軸に、言葉や文章、古典文芸、歴史、思想史、美術と、5つのジャンルにわけてそれぞれの「入門書」を紹介しています。いずれの書評も平易でわかりやすい上に、新鮮な発見が明確に提示されており、まさに「入門書」の入門書といえる内容でした。著者は純書評も多くあるようなので、読みたいと思います(本書が遺作になってしまったのですね…)。2015/01/30

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