内容説明
【サントリー学芸賞受賞作 1992年度 思想・歴史部門】 内閣制度を創設し、明治憲法の制定に尽力したことで日本近代史にその名を刻む伊藤博文。しかし立憲制の導入のために伊藤がまずなすべきことは、天皇の権限を明らかにし、「宮中」を制度化することだった。大隈重信・井上毅ら政敵との抗争や、度重なる政治的危機を乗り越えて明治天皇の信頼を得た伊藤の、「真の業績」を論じたサントリー学芸賞受賞作。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
10
5年ぶりの再読。以前読んだ際より知識がついているのでスラスラと読めた。「宮中・府中の別」を重視する立憲君主制を目指した伊藤が、宮中派などと対立しながらも政権の主導権を握り、憲法を成立させるまでを扱う。明治十四年の政変の複雑な対立軸がかなりわかりやすく解きほぐされている。伊藤の意見が全て通っていた場合、もっと内閣の権限が明確な憲法が出来ていたと思う。2020/06/21
中年サラリーマン
10
明治十年代前半、西南戦争などの内乱を抑えたものの明治政府の求心力は低下する一方だった。それを背景に宮中が動き出し政治に介入しようとし政治権力の分散化の危機に。また、目を外に向ければ一等国家でない日本を虎視眈々と狙う列強があった。そんな中、伊藤博史は内部的には政府の求心力を高めそれを中心とした国家運営をする為、外部的には一等国家と列強に認知してもらうため内閣制度設立に奔走する。しかし、当時の政府は天皇との関係も最悪であり改革は困難だった。伊藤はどのようにしてそれらを切り抜けていったのか。良書。2014/09/07
spanasu
5
「宮中・府中の別」という方針のもと伊藤博文が、内閣を中心とする政治システムの樹立と、天皇の「立憲君主化」による「宮中」の介入の排除へ取り組んだ姿を描き、大久保没後から明治憲法制定までの政治史の流れもよくわかる。筆者のこの研究者に続いて、伊藤之雄・瀧井一博氏らの「行政」概念に注目した伊藤研究が行われ、伊藤の高い評価の定着につながる点からも重要な研究である。2020/04/19
ScorpionsUFOMSG
3
書評『伊藤博文と明治国家形成―宮中の制度化と立憲制の導入』 http://bit.ly/2h9BdH8 内閣政治を目指す伊藤博文、天皇親政を画策する宮中派、良き協力者であり敵対者でもある井上毅。そこに割り入る民権派、大隈重信、黒田清隆ら。各々の思惑が絡み合う中いかに伊藤は…2017/06/23
かんがく
2
伊藤博文が天皇や宮中、他の藩閥政治家、在野との対立や交渉や協力をしながら、内閣制度、憲法を作っていく過程を丁寧に書いた本。重要なのは、天皇を能動的な政治的主体にしない立憲君主制を目指したこと。2015/10/01