内容説明
「天才的な馬鹿になれ」感動の群像ドラマ!
映画「北辰斜にさすところ」原作、待望の電子化。
七高(現・鹿児島大学)野球部の創部100周年を記念して、かつてのライバル五高(現・熊本大学)との対抗試合の開催が決まった。太平洋戦争前夜、七高のエースだった上田勝弥は、記念試合の開催に向けて取材をうけ、当時の記憶を語りはじめる。
旧制高校から帝大に進んだかつてのエリートは、私欲に走る小賢しい秀才を軽蔑し、国家や社会のためにひたむきに生きることを目指した。
太平洋戦争の終盤、学徒出陣で徴用された多くの学生が戦死し、生き残った者たちはその遺志を継いで、国の再興に力を尽くしたのだった。
英霊たちに見守られながら、七高と五高の記念試合が幕を開ける。
ベストセラー『史上最強の内閣』の著者による、祖父から孫へと語り継がれる、誇り高き精神の物語!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamatoshiuruhashi
26
10年も前に観た映画「北辰斜にさすところ」の原作本。室積光という作家を知ってからの本命本。先に「史上最強の内閣」を読んだときにこの映画の原作者だと知ったのでこの本にたどり着く。先の本を読んだときは政治問題を扱っていると思ったが、「史上最強の大臣」、本作と読んでみると一貫しているのは教育と日本人としての矜持への問いかけであると思えてきた。旧制七高に学んだ人々を中心にその孫の世代へ話を繋ぐことで、歴史は途切れているのではなく、名もなき人々の世代の濃密な繋がりであることを語りかけてくる。また映画も観たくなった。2018/06/07
西澤 隆
9
室積光が書く物語は「都立水商」「ドスコイ警備保障」の昔からアスリートやスペシャリストをきちんと尊敬せいよという部分については一貫しているのだけれど、ここ数年の作品ではそれに加えてかつての誇り高き日本人の矜持、それもウヨクサヨクと揶揄するようなものではない、人の根っこの部分をいつも下敷きにしてドタバタやっている。その下敷きの部分をストレートに扱ったこんなオオマジメな作品も、彼は書くんだ。サービス精神旺盛な彼だから全編説教くさいわけではない。けれども、姿勢を正して受けとりたい。そんな旧制高校の男たちのお伽噺。2018/05/14
TakaUP48
7
いつも超面白しい話を書く室積先生の作品とは露知らず。映画「北辰斜めにさすところ」の原作。旧制七高(現・鹿児島大)の野球部の創部100周年を記念して、宿敵旧制五高(現・熊本大)と対抗試合をすることに。OBの参加を募るなか…旧制七高の新入生は「天才的な馬鹿になれ」と訓示を受け、当時のエリート集団は、小賢しい秀才を軽蔑し国家や社会のために生きることを目指していた。野球と勉強と仲間を大事にした彼らの幾人かは、学徒出陣で戦死する。生き残った者達の負い目と戦争の悲惨な記憶を孫へと語り継ぐ物語。バンカラ懐かしかあ! 2018/10/05
びっぐすとん
5
108円本。いつもと違って超真面目。日本はなんと愚かだったのか!どこの世界に家族を戦争に行かせたいと思う人間がいるのか?宗教も民族も関係ない。戦争したがるのは戦地に行かなくて済む権力者だけだ。未来ある若者や一家の大黒柱の無念が心に迫る。生き残った人々の努力で再興したが、次代に残すものもなく散ったエリートたちが死なずに本領を発揮していたら・・と思わずにいられない。もっと今の子に戦争の話を学んでもらいたい。思えば私が生まれたS40年代は戦後たった20数年だったのだ。大人は皆戦争体験者で、戦争の話は身近だった。2017/01/30
高橋 (犬塚)裕道
4
星5。滅茶滅茶面白かった!感涙に咽び、笑い又底知れぬ悲しみに涙し、悔恨に苦しむ。戦争の虚しさ、命の軽さ、人の無力を思い知る。そして胸空く爽快を知る。蛮カラ版フィールド・ザ・ドリーム!映画にもなったそうだ、一度観てみたい!2015/11/06