内容説明
「戦費調達」の絶対使命を帯び欧米に向かった高橋是清と深井英五。彼らを待ち受けたのは、急速に進化した二十世紀初頭の金融マーケットであった。未だ二流の日本国債発行を二人はいかに可能にしたのか? 当時の市場の動きを辿ることで外債募集譚を詳細に再現し、全く新たな日露戦争像を示す――これはもう一つの「坂の上の雲」だ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えちぜんや よーた
92
旅順要塞がなかなか陥落しない。戦線が膠着すると軍事費がかさむ。そして国庫からゴールドが流出する…。そんなとき政府からつめられるのは乃木将軍ではなく、だるまさん(高橋是清)。 NHKで放映された「経世済民の男」ではオダギリさんがドラマッチクに軍資金を集めていたような感じがしたけど、じつは英、米、仏、独の銀行家たちに転がされていたことがよく分かった。2015/09/13
kawa
36
良書。高橋是清氏らによる日露戦の戦費調達のための外債発行の実態を詳述。資金調達のキーパーソンとなったユダヤ人銀行家ヤコブ(ジェイコブ)・シフ氏は、言われているロシアでの反ユダヤ主義(ポグロム)に対する報復としてより、途上国への純投資、経済行為の一貫として外債引き受けを行った。実際にも当初は不人気ながら戦況の進展もあって人気化、国内では条件が甘すぎたと高橋らが批判されたと言う。喧伝されている内容と異なる実態が面白い。彼の功績は何次にも渡る発行を成功させた多方面へのリレーション構築にある等、興味深い項目多数。2025/05/12
seki
27
幸田真音氏の小説「天祐なり」では、かなり高橋是清が美化されていたが、本書では、当時の記録が客観的に示され、日露戦争資金のための外国での国債発行の成功が、かなり偶然に左右されていたと知る。しかしながら、高橋是清の肝の据わり方は半端なく、高橋氏がいなければ、海外での国債発行など成功しなかっただろう。また、本書は金融史としても、非常に面白く、JPモルガンやゴールドマンサックスがこの頃から活躍していたのだと知り、私的には、そんなところもツボだった。2020/10/05
かんがく
18
著者は歴史家ではないが、高橋是清の自伝と数値データを中心に、日露戦争時の国際金融について詳細に書かれている。単なる日本とロシアの戦争でなく、列強の思惑が深く絡まりあっていることがよくわかる。グラフも豊富なので、数値で日露両国の国際評価の変動が理解できた。新聞などのメディアの普及も、戦争や講和の趨勢に大きく影響を与えるようになっており、第0次世界大戦と呼ばれるのも納得できる戦争である。2020/07/19
エリナ松岡
18
最近金融物に集中して読んでるんですが、ウォール街関連はやや食傷気味だったこともあり、異色とも言えるこの本は素直に有り難かったです。分厚いんで読み切れるか心配ではあったんですが、なんとか読了しました。皆さんのレビューにある通り、内容的には申し分なく非常に上手くまとめてあると思います。しかしまぁ、戦争に対する冷めた視点がすごいというか、これが投資家的な視点なのか、と読みながらずっと考えていました。2018/01/21
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