ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ

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ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ

  • 著者名:金井美恵子
  • 価格 ¥1,584(本体¥1,440)
  • 新潮社(2012/07発売)
  • ポイント 14pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784103050049

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内容説明

あたしとまだ三つだったあんたを置いて、とうさんは家を出て行った。普段着でちびた下駄をつっかけ自転車に乗って、ちょっと出かけて来る、と言ってそれっきり帰ってこなかった──。過ぎ去った長い時間の濃密な記憶と、緻密な描写による重層的なコラージュが織り成す甘美な物語。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

273
小説の中には、少なくても3つの異なった時間軸が併存する。すなわち、主たる物語の展開する1955年あたりと、「外地」の思い出として語られる1925年頃、そしてそれらを「私」が語っている現在時とである。しかし、その「語り」が、この小説そのものかというと、実はそうではない。私の本を図書館に返しに行こうとして、父親が亡くなるという記述が何度もあるのだから。空間もまた、その切れ目のない文体とあいまってネジレを起こし、「まゆみの生け垣」の周縁を繰り返し彷徨うことになる。そして、読むほどに読者はその重層世界に酩酊する。2013/04/06

ケイ

78
独特の文体で、一文が長いけれど、話してるような語りなので、語り手のリズムで話してる気分になると、すーっと読める。ピースオブケイクと聞くと、美味しそう。でも、ここのcakeは、じっとりと湿ったところに置いておかれてるために、少し崩れていそうで、食べたくない。登場人物の女性たちの互いをみる視線が、トゲを含んでいて、すまして話をする人を心の中で知らないうちに嘲笑しているような毒も含んでいそう。紹介にあるような、官能は私はあまり感じなかった。全体に感じるのは、苦い毒。2015/01/10

コットン

74
夜さんのオススメ本。女性主人公が幼い頃に母、叔母、祖母らと失踪した父などのことを回想する話。長いセンテンスが延々続くが、そこには例えば服や映画など徹底的にこだわった作者の題材は万華鏡を眺めるようで、かつ意味ある書き直しがあるためストーリの変容をも読者は楽しめることが出来る。あとがきにあるピース・オブ・ケーキがヒッチコックの『映画術』からの引用で「普通作家というものは人生の一断面を切り取って見せると言われるけれど、私の映画はケーキの一切れを差し出すというわけだ」の答えに感動したからと…流石に映画好きな人だ!2015/05/23

風眠

61
こんなにも言葉に翻弄された読書は初めて。まず「私」「わたし」「あたし」で混乱。そして何度も繰り返す文章に対して、何か意味があるはず、そうに違いない、って考えながら読んだ結果、よけいに混乱。私はどうやら、この本の読み方を間違えたらしい。本書は「楽々とできる(ピース・オブ・ケーキ)語り直し(トゥワイス・トールド・テールズ)」というあざといタイトルなのだという、『あとがき』の一文を読んだ時の衝撃といったら!私はただ、差し出されたそのケーキの一切れを食べるだけでよかったのだ。毒が入っていそうに甘い、そのケーキを。2018/06/20

yn1951jp

51
まさに読者を第七官界に彷徨させてくれる物語。過去の風景や人の姿、語られた言葉や素材のテクスチャー、光や影、色や香り、映像や音、それらのディテールが聴覚や視覚や嗅覚や触覚や身体感覚、さまざまな感覚を通して思い出される時空を超えた物語。読むこと自体が、経験していないはずのそれを思い出しているように錯覚される物語。表紙の岡上淑子の作品のようにプラスティック・ファンタスティック・シュールリアリスティックなコラージュ体験を味わえる、特別に素敵な本です。カバー「彷徨」1956、扉「終曲の午後」19522015/03/01

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