内容説明
二人は仇同士であった。二人は義兄弟であった。そして、二人は囚われの王と統べる王であった──。翠(すい)の国は百数十年、鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)という二つの氏族が覇権を争い、現在は鳳穐の頭領・〓(ひづち)が治めていた。ある日、〓は幽閉してきた旺廈の頭領・薫衣(くのえ)と対面する。生まれた時から「敵を殺したい」という欲求を植えつけられた二人の王。彼らが選んだのは最も困難な道、「共闘」だった。日本ファンタジーの最高峰作品!!(〓は禾偏に魯)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
303
『廸く者としてあることの一番の困難は、なすべきことをなすこと自体でなく、何をなすべきかを見極めることにある』血脈を同じくする二人の王、互いの親は「相手を殺せ、根絶やしにせよ」と遺言を残した。血で血を洗う骨肉の戦いが続く種族間の敵同士。争いに勝つことより和解の道を選ぶ、若き王が歩む困難極まりない道。後半に進むにつれ、凄すぎて圧倒された!誇り高き気高さと、内包された孤独と忍耐。一族の未来を思う王の言動は、その思いを知らぬ同族にさえ憎まれる。妻たちの一途と、結末の潔さに泣く。リーダーという荷の重さが響く‼️🙇2021/02/09
takaC
145
6年ぐらい前に単行本で読んで以来の再読だったけどやっぱり面白かった。好みが変わっていない=成長していないということかもしれないけど。ちなみに文庫化の際の訂正箇所はどこだかさっぱりわからなかった。2015/01/19
buchipanda3
127
果てしなく深い憎しみに支配された国を統べる二人の王の物語。落ち着いた語りで紡がれるその高貴な世界観を堪能した。穭と薫衣は互いに信念と矜持を持って国を想う。しかし敵対する立場が目指す道の妨げとなり、なかなか先の見えない均衡状態を生み出してしまう。相手を信頼して良いのか、不安は杞憂でしかないのか、駆け引きと心の葛藤が巧みに描かれていたと思う。それだけに二人が相手へ正直な言葉をふっと吐き出した場面には胸が一杯に。そして読み終えた時に歴史の流れの余韻に浸りながら、切なさと共に大切なものを得たような心持ちとなった。2020/09/04
ひめありす@灯れ松明の火
110
黄金の王 白銀の王と言う事で、最初は穭が黄金の王、薫衣が白銀の王と称されているのかと思った。でも、二人が表と裏。不安と焦燥と希望と安らぎの中「もし」と想像しているから、どちらも二人の事。相手の治世をきっと穭にとって玉女は薫衣。もし薫衣が女性なら、もっと穭の覇権も治世も安定していたはずだ。なのに、何と何と、細い線の上を二人の男は辿ったのだろう。神経も、計画も、綱渡りなんて生易しくない。歯を食いしばり、血を吐き、耳を呪詛の声で塞がれ、足の裏を金の糸でずたずたにしながら、猶月の銀色の光だけ求めて歩き続ける様な。2015/11/29
Mumiu
76
双子皇子龝(しゅう)と厦(か)の時代からその血筋同士が玉座を奪い合っている翠の国。今は鳳龝の頭領・穭(ひづち)が治めている。旺厦の頭領・薫衣(くのえ)の美しさ天然さそして聡明さ。まわりの人はいろいろ嫌になる。穭が一番そういう思いとたたかったんだろうな。統治者としては薫衣より優れていると思うけど。異国との戦勝報告で樊(まがき)さんが途中で薫衣を殺しとくべきでしたというのも尤もです。薫衣と穭の結末は決して大団円とはいえない。でもふたりともなすべきことを成し遂げて思い残すことはなかっただろう。2014/11/24
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