内容説明
無縁社会の何が悪いのか。遁世も悪くない。「ポジティブ」がそんなに善いのか。格差是正なんて欺瞞だ――。権利や豊かさや便利さを追求し「幸せになるべき」と刻苦勉励してきたはずの日本人が今、不幸の底に堕ちている。大震災、政権交代、「正義論」ブームなど近年の出来事を稀代の思想家が厳しく見つめた時、偽善の殻に包まれたこの国の正体が露わになる。柔らかい筆致の中に、日本人の禍福の真理が詰まった至高の啓蒙書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
34
色んな哲学の話しがあり現状に落とし込んでるところがよかった。2012/05/28
姉勤
33
快楽に一番近いところと、死に一番遠いところを目指す過程が「幸福」とすれば、それを目指す現在社会は正しい。が、それを求め続ける活動が、アリ地獄に等しく、足掻けば足掻くほど幸福とはかけ離れていく。老荘や仏教の、いわゆる諦めが、それより幸福に至るには、お手軽と言える。しかし、日本はともかく、世界はそれを許さないだろう。人類が絶滅に瀕すれば、または生老病死を克服出来れば、手に入れられるかな?しかしそれは人間を超えている。2012/12/02
テツ
28
蔓延する幸福病。幸福信者。人間は毎日溌溂とほがらかに生を賛歌して笑顔で過ごさねば嘘だみたいな現代の空気への懐疑。成功とか幸福とか勝ち組とかそうしたものへの妄執に支配されることの馬鹿らしさがよく解る。幸福を目指すことは決してぼく個人を豊かにしない。満たされることもない。自分に足りないものを数えて何故幸福になれないのかと叫ぶ日々は虚しい。あるものに感謝しあたりまえに享受していたものに感動し、ただ在ることだけを受け入れた先に真の人間としての存在意義が見つかるような気がする。2018/05/28
Rubik's
27
★★★★☆2019/07/21
Takayuki Oohashi
24
以前、とあるおじさんと話した時に、尖閣諸島の話題になり、そのおじさんが「中国が攻めてくるのに、守れないなんて、憲法の方がおかしいんじゃないの?」と言っていました。この本はそのおじさんの理論を日本の伝統に鑑みて述べた本です。折口信夫の「神 やぶれたまふ」や宮澤賢治の「無声慟哭」というような詩の引用を通じて、自由・平等・幸福といった戦後民主主義の価値観に対して、それによって失われた日本の古来の思想について述べていました。赤坂真理のような論者に私淑している僕ですが、このような筋の通った論もありかなと思いました。2016/08/10
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