内容説明
何が起ころうと悩まない。決めつけない。そして全てを受け容れ揺らぎ続ける。それが自由になることであり、強くなることであり、未来を楽しむことである――。幾多の天災人災を経験し綴られた鴨長明の境地を今に重ね読み解く。フクシマに暮らす著者だからこそ語れる、無常を力に変えてしなやかに生きぬくための智慧。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベイマックス
70
図書館本。『方丈記』ってこんな話だったんだ。周りにいた友人より読書家だし国語の成績だけはよかったけど、まだまだでした。◎ちょっと、東北の震災の話題に絡め過ぎな気もしなくもなく。◎大きな一戸建て住宅には憧れるし、持っている物や考え方に執着してしまうし。でも、少しでも、『無常』を取り入れられたならば、ストレスも減るのかも。◎幸せも価値観も、比較すべきことじゃないし、当人の想い次第。◎『無常』というと、「平家物語」の冒頭を思い浮かべる。そして、産油国の繁栄を見ると、今だけだよと思う。だだの、嫉妬心だけどね。2020/08/16
寛生
54
【図書館】著者が現代語訳している鴨長明の方丈記を読んでいくと、何かとても深いもの、美しいものを感じる。本全体を読了後、永ーく色んなことを一日中考えさせられる。何とも大きな愛というか、大きな静けさ、強さ、不動心、唯識無境、諸行無常を感じる。「心を動かす事なし」という声、心を動揺させてはならないという声がする。「風流の力で、無常の世界を歩いていける」という声。(61)無常の中を揺らぎ続けることさえ可能にさせる愛の声。人間のあり方なのか、それともあろうとしない無常なのか?執着を捨てていけという声。感覚がのこる。2014/05/14
のし
17
鴨長明が生きた時代と、福島。天災、政治が上手く機能しなかった時代と、重ねる。自由と強さを教えられた一冊でした。また、宗久先生の本を読みたい。2014/09/23
ともとも
14
『方丈記』、鴨長明が生きた時代と現代の時代、仏教を踏まえながら、解りやすく綴られていて、『方丈記』の世界、鴨長明が、玄侑宗久さんの思いが、読んでいる私にもヒシヒシと伝わってきました。何事にも囚われず、振り回されずに自由に生きていくことは、人間としての強さと世の中を生きていくための必要性を感じてしまいました。 今一度『方丈記』を手に取って読んでみたくもなりながらも、生きていく勇気と希望を与えられたかのような1冊で良かったです。2015/03/15
さっちも
13
福島在住の禅僧が、震災後の悲惨な状況に無力感に襲われなかで方丈記とであう。自分の檀家だけでも3ヶ月に6人も自殺する惨状の中、人は無常の前でどう処すべきかを方丈記に学ぶエッセイ。冒頭「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつきえ、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし、世の中にある、人と栖と、またかくのごとし」。絶対にこうなんだ!という思い込みでは、今まで起きたことにしか、解釈ができないし、予測不可能な事態には拒否しか示せない。このまま続いて欲しい、続くに違いない、2017/09/29