内容説明
「しゃべりことばによって“劇物語の世界”を立ち上げるのが俳優だ」「演技の稽古は、乳幼児がことばを覚えていく過程と同じである」-。会話を積み重ねることでゼロの空間に立体的な劇物語の世界を創出していくためのコツを教える入門書。
目次
序章 演劇はおもしろい
演技はだれでもできる
表現は核心の問題だ
初心者は正しい
演技を意識化する
表現には経過がある
自転車を演じろ
笠智衆の演技を盗め
人間はあるのだ
第1章 劇とはなにか
1 劇の総過程
三つの過程
表現上の断層と飛躍
戯曲を読む過程
2 戯曲のことば
戯曲は読みにくい
小説と戯曲を読み比べる
小説と戯曲のちがい
詩のことば
3 劇の起源
ハリソンの起源説
吉本隆明の説
折口信夫の説
吉本の折口評価
表現とは転倒だ
俳優は巫師だ
舞台は賽の河原だ
稽古場は妣ノ国・常世だ
第2章 戯曲とはなにか
1 詩の成立
ことばからことばへ
記紀歌謡
土謡詩
叙事詩と叙景詩
抒情詩
儀式詩
2 小説の成立
巫女から女房へ
詩的言語から物語言語へ
儀式詩から説話物語へ
抒情詩から歌物語へ
歌物語から日記文学へ
『源氏物語』は近代小説だ
3 能・狂言の成立
折口の能・狂言発生説
劇言語の誕生
あるがままの大衆
狂言から脇能へ
狂言から修羅物へ
修羅物から現在物へ
4 戯曲の成立
浄瑠璃と歌舞伎
主題としての性
道行とはなにか
遊女と遊人
人は卑小なものに生きる
虚実皮膜論とはなにか
劇言語としての口語
第3章 演技とはなにか
1 稽古の過程
稽古過程の誕生
稽古過程とはなにか
稽古は虚実の往還だ
セリフは覚えるのか
稽古の四段階
平面から立体の世界へ
「創世記」は劇づくりのモデルだ
光あれと俳優は言う
ことばで劇世界を立ち上げろ
ことばで関係づけろ
2 ことばへの準備
俳優は赤ちゃんだ
内コミュニケーション
外コミュニケーション
察知と共鳴動作
共鳴動作の対話化
追視・視線の共有
外コミュニケーションの基礎
意図・シグナルの交換
やりとりゲームと文法
指さし行動と初語
延滞模倣
3 ことばの獲得
喃語から
ことばの恣意性と演技
幼児語・成人語へ
再びセリフとは
第4章 会話のレッスン
竹内敏晴と柄本明
ことばが聞こえない
会話とはなにか
会話のレッスン
セリフを文節化しろ
セリフは呼吸がすべてだ
セリフは一調二機三声だ
自分の声を出せ
演技はできない
第5章 初めてのレッスン
詩を読んでみよう
素の状態が基本だ
聞きながら読め
ふたりでひとつの詩を読む
再び一調二機三声について
セリフは即興にしよう
終章 舞台とはなにか
なぜ緊張するのか
俳優の二重性
あとがき