内容説明
法然が膨大な行の体系の中から選び取った「南無阿弥陀仏」の一行は、不条理や不安が生み出す絶望から人々を自由にする唯一の言葉だった。主著『選択本願念仏集』をテキストとして、その信念と意義を読み解く。
目次
序章 中世という時代と法然の出現(輪廻という物語 神は仏の一部 ほか)
第1章 新仏教「浄土宗」の樹立(法然の選択 道綽の決断 ほか)
第2章 新しい救済原理と方法(「正行」と「雑行」 「開合」「翻対」「相対」 ほか)
第3章 どのように「信じる」のか(「三心」 「信心」成立のための二つの過程 ほか)
第4章 「諸行」論(なんのために「諸行」が説かれているのか 念仏を証明する仏たち ほか)
終章 ひとえに善導による(念仏弾圧のなかで ふたたび「選択」について ほか)
感想・レビュー
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かに
5
宗教とは、有限な自己が無限の存在に自己を託そうとする営み。「私共は神仏が存在するが故に信ずるのではない。私共が神仏を信ずるが故に、私共に対して神仏が存在するのである」 従来の仏教は煩悩からの解放が目的であったが、善導や法然の浄土教では、煩悩のただなかにあって、凡夫のまま救われる道がある。 「定散」(瞑想や道徳的実践、仏教が教える徳目の実行)は「随他意」(聞き手の能力や状況に応じて教えを説くこと)の説法であり、「念仏」は「随自意」(聞き手の状況にかかわらず自己の考えるがままに説くこと)による説法である。2023/03/08
おせきはん
5
諸行をできない煩悩に縛られた凡夫も本願念仏することにより往生できるとして、庶民のための新しい仏教を創設した法然の考えが、当時いかに斬新であったかがわかりました。2018/02/04
maqiso
3
中世には浄土への願いが一般的になったが、当時の修行や戒律は武士や庶民には縁がなかった。法然は道綽・善導の浄土門を発展させ浄土宗を開いた。自らが仏から遠く能力もない凡夫であることを認識し、そこからの救済を求めて阿弥陀仏の本願にすがることで救われるとした。経典には多くの修行があるが、だれもが容易にできる念仏を阿弥陀仏が選択し、往生のためには念仏のみを行うように主張した。既成の仏教を否定する内容だったため激しい非難と弾圧を受けた。2022/01/01
鈴木貴博
1
「選択本願念仏集」を読み、法然上人の教えを解説。選択本願念仏集は九条兼実の要請で著され、特定の弟子たちが書写を許された、法然上人が至った信仰の書であり、浄土宗の立教開宗の書である。改めてこの教えが生まれた経緯や依拠する仏典、先人の説を知るとともに、浄土宗が成立時いかに画期的でそれまでの仏教を変えるものだったかということを理解した。2019/06/06