内容説明
7つの物語が精妙巧緻にリンクする連作短編
今年四十歳になるタクシーの運転手、武上英夫は妻に言えない秘密を三つ持っていた。五年前、放火事件が起こった冬の夜にタクシーに乗せた女との経緯もその一つだった。彼に内緒で定額貯金を積み立てている妻にもまた、結婚前に付き合っていた危険な男との過去があり、五年前の冬の夜に武上英夫のタクシーに乗った女には、妻子ある山田宗雄との短い恋があった。山田宗雄が働く新聞社で記者を務める七種歩は妻のまゆみの浮気に気づき、まゆみとは高校時代の同級生だった有坂弓子は三十五歳になっても結婚できないのは妹のせいだと密かに思っていた。有坂弓子と交際中の竹中昭彦には事故で失った双子の弟がいたが、それを彼女に打ち明けていなかった。
そして街の裏社会に生きる“少年”倉田健次郎は雨の夜、武上英夫のタクシーに乗り込み――。ひとつの街を舞台に炙り出されていく、夫婦の関係、恋人の関係、不倫の関係、一晩かぎりの関係、過去の関係……。それぞれの事情を抱えた男と女が、それぞれの人生の境界線に直面したときに生まれる“事の次第”を巧みに描き出し、交錯し連鎖していく至極の小説集。表題作のほか「寝るかもしれない」「姉の悲しみ」「七分間」など、全七篇所収。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
91
★☆☆☆☆20044【事の次第 (佐藤 正午さん)】 『ちょっと、世間話でもしながらコーヒータイム( ^-^)_☕️””” しませんか?』まあ、人それぞれ秘密のひとつやふたつありますよね。本人が気にして秘密にしていた事なんて、他人にとっては「小ちゃー!」「秘密?意味わかんない」みたいな事だったりね。何かの関係がない限り、人は人をそこまで注意深く感じてないかな〜?えっ?そんな事ないって?じゃぁ、試してみましょうか。今朝の旦那さんの服装を上から下まで種類と色,デザイン,髪型、言えますか?(男性なら奥さんね。)2020/04/20
ケイ
74
短編7つが微妙に絡み合っている。20才位から40代までの恋愛や夫婦生活について。誰もあまり幸せでなさそうなのはナゼだろう。つまらなくはないのだが、どうも“辛気くさい”と言う言葉が出てきてしまう。少年があまりに痛々しかった。私には共感しにくい小説かなあ。2014/11/13
TAKA
35
いやもうこんがらがって人物がしっちゃかめっちゃかで内容が頭に入ってこなかった。ページをもとに戻したりして確かめながら読むのは疲れた。秘密を抱えている人達が繋がっているのか離されてしまっているのか…。結構難しかったです。2019/06/27
ゆきらぱ
25
正午さんのスタイルが良いみっちり作られた作品が楽しめた。謎めいた話と謎そのものの人物が出てきて混乱させられるがそれがまた楽しい。2025/02/23
アリ子
19
7つの短編の登場人物が互いに絡まっている。その絡まり方が正午さん流というかロジカルでパズルのよう。「鳩の撃退法」のキーパーソン倉田健次郎(20)も登場。存在感あります。解説は「書くインタビュー」の東根ユミさん。実在してました。2017/03/30