内容説明
ある日、背中の痛みを訴えだした父。その原因にたどり着いたとき、事態は想像を超えて悪化していた――食道ガンの発見、手術拒否、そして転移。「ほんまに、お前がいてくれて助かるわ。なんで嫁になんて出してしもうたんやろか」……病に倒れてなお奔放な父と献身的に見守る娘が闘病を通じて育んだ、かけがえのない絆を描く感動秘話。
目次
第1章(発見まで;残日録 春;手術は、しません)
第2章(残日録 初夏;不良病人)
第3章(残日録 晩秋;花の下にて)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マリリン
33
〈はじめに〉で、由紀子さんの文才を感じる幼いころの回想に心を掴まれた。子供の頃の父親の姿や、職業柄仕事場にある様々なものへの問いが微笑ましい。親子を超越した同士的な父娘で綴った450日。端整な作品は破天荒だが人間味溢れ情緒的な人柄から生まれたものだと。父親に「大丈夫...」と言われるのは確実に前向きに生きる力になる。遺した「残日禄」に悲壮感はない。本作を書いた事が、娘からの最後の甘えなら...嬉しいだろうな。父親を、人を励まし認め愉しませる男だったと評する。父娘の文体が似ている。これからも書いて欲しい。2024/08/01
ポテンヒット
14
どんな時もユーモアを忘れずに楽しむ事をモットーとする。最期まで団鬼六先生らしく、良い人生の締めくくりをされたと感じた。もう充分生きたという思いとまだ頑張りたいという思いが交錯するのは当然と思う。ガンを宣告され、永山則夫ら死刑囚や秀吉の甥で切腹を言い渡された秀次と自身を重ね合わせる。特に秀次には、先生が彦根出身ということもあり関心が高かったようで、先生の描く秀次の物語を読みたかったな。2024/09/01
がんぞ
7
『赦す人』と併せ読むと一層興趣が増す。作家としてSM=エロ小説という一分野を開拓した有能は紛れもない‥スポーツ新聞は無責任なもので《団鬼六、人工透析拒否》と書きたてたが、「ほかの臓器は生きたいと必死なのに無視するのは傲慢ではないですか」との説得を受け容れ数年の余命を得た/代表作『花と蛇』等は女性讃歌にほかならないが、娘が末期に献身的に介護したのも尊い/取り巻きに騙され《SM御殿》も人手に渡り‥利益を得た人々が離れる中で、将棋棋士たちが『将棋マガジン』経営・等々の恩義を忘れなかったことには一服の清涼を感じる2016/11/02
ykoji
3
外出先で読んで大失敗。泣きすぎて困った。団鬼六という光がこの世から消えてしまうことがどうしようなく悲しい。だけれども、最後のほうでユーモア溢れる由起子さんとの会話が大変微笑ましく大切な気持ちになった。こんなおっちゃんが近くにおったらおもろいやろなと。2012/03/23
ぱくすい
2
自分自身老いた父の闘病に寄り添った経験があるので、それと重ね合わせながら読んだ。病床にあっても誰にでも優しく、ユーモアあふれる鬼六氏の姿がすばらしい。由起子さんとのお別れも、泣きたいような笑ってしまうような素敵なものだった。今,身近にいるすべての人といつかは別れの日が来る。だから「別れるときに後悔しないように、日々、しっかり関わりあいたい」と思わされた一冊。「赦す人」を読んで手に取ったのだが、いよいよもっと鬼六氏の著作に触れたくなった(まずは随筆から(^▽^;))。★★★☆☆2017/01/26