内容説明
なぜか日本では百年ごとに実話怪談が流行っている。では、百年前、二百年前には何があったというのか? 江戸の四大幽霊事件から、大正・昭和初期の心霊ブーム、平成の実話怪談ムーブメントまで、意外な視点でつづる新たな日本怪談文学史、誕生!
目次
第1章 二つの震災の間で(震災の日に…;水の滴る音 ほか)
第2章 怪談百年周期説(百年前の「怪談」ブーム;テレビやインターネットにおける怪談普及 ほか)
第3章 文化文政の怪談作家たち(近世江戸文芸の流れ;大江戸文豪たちが怪談を書いていた!? ほか)
第4章 明治大正の怪談作家たち(圓朝怪談から近代文芸は生まれた?;泉鏡花―「お化けの隊長」と呼ばれた文豪 ほか)
第5章 平成の怪談作家たち(現在進行形の「黄金時代」;日本初の怪談専門誌「幽」の創刊 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒデキ
49
以前から読みたかった本でした。 東さんの情報量の多さに圧倒されっぱなしの読書になりました。 情報を伝える流れが適格で百年ごとに何があって怪談が流行ってきたかを書籍と怪談会の記録という文書で残っているものから語られています。 出版が2011年ということから、ネットの存在が、さらに大きくなったこの10年をまた描いて欲しいと思いました2025/07/01
アーちゃん
48
2011年8月発行。『平成怪奇小説傑作集』の流れで読了。東雅夫さんが本書の依頼を受け執筆に取りかかるまでの間に起きた東日本大震災のためか、第一章では2011年当時と前年の2010年『遠野物語』出版百周年で進めていた”みちのく怪談プロジェクト”の事に触れている。タイトルの”百年ごと”は(当時の)百年前の明治末~大正年間、二百年前の文化・文政年間、三百年前の元禄~宝永年間が出ていてそれぞれ興味深い。巻末の「日本怪談文芸年表」は1661年から2011年までの怪談に絡む作品年表。資料としても優れていると思う。2025/03/13
藤月はな(灯れ松明の火)
22
綿々と続く怪談ブームをスポットに当てた新書。著者は幻想小説や怪談の名物編集者、東雅人氏という素晴らしさと紹介されている作家の豪華さに眩暈がしそうです。怪談は一時、文化価値が低いものとして見なされていた時もありましたが怪談があるからこそ、文化が円熟できるきっかけにも成り得たのですね。震災後、怪談の意味はどのように変わるかと言う考察も怪談の転換期にもなると思います。NHK放送の怪談番組や紹介されている怪談の多くに読んだものがあったのが嬉しかったです。怪談作品の年表も嬉しい限り^^2011/10/30
ぐうぐう
19
二百年前、百年前、そして現在の怪談ブームを分析する東雅夫の『なぜ怪談は百年ごとに流行るのか』。実話とフィクションの不穏な境界領域に生成する、いわゆる虚実皮膜な怪談の特質を、東は名作怪談を丁寧に紹介しながら明かしていく。幕末の動乱期に繋がる社会不安の兆しがあった二百年前、明治の三陸大津波と大正の関東大震災が起こった百年前、そしてバブル崩壊から東日本大震災としての現在に、怪談が盛んになった理由を、(つづく)2012/09/07
mittsko
15
日本怪談文芸史の決定版、かな。文句なし、流石の筆力で、読み物としても堪能できる。客観情報を並べていくだけなのにね、アンソロジストの匠の技なんだろうか… すごいなぁ、ホントにすごいなぁ…(ΦωΦ) ※ 2011年8月刊。先んじていた怪談文芸の発展を追って(90年代、いわゆるホラー・ジャパネスクが台頭)、実話怪談の話芸が発展していく時期。東北で先鋭的な怪談活動を始めたばかりの東先生にとっては、東日本大震災の直後。「慰霊と鎮魂」の怪談文芸の評価を定めんとする気概に満ちた一冊。頭がさがる2023/08/28