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内容説明
「死せる生」にあって「生ける生」を求める――。作家の分身である登場人物たちが作品の中で繰り返し展開するテーマ、それは苦痛の中に生きる人間の現実である。処女作『貧しい人たち』から絶筆となった『カラマーゾフの兄弟』まで、全小説の内容紹介とともに百九十三人の主要登場人物を論じ、ドストエフスキー文学の魅力に迫る、読む「人物事典」。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Vakira
52
小説家で誰が一番好きですか?と問われたら、以前なら乱歩とか公房とか、またはSF作家の中で誰が好きか思い巡らしただろう。しかし、ドスやんを知ってからは迷いなくドストエフスキーと答えられる。最初に読んだのが「カラマーゾフの兄弟」。読み切る自信はなかったのですが速攻で虜に。登場人物の強烈なキャラ立ち、神の存在の問い、4兄弟出生の謎、父親殺しのミリテリーと僕が惹かれる内容盛沢山であっという間に読み切った。それは僕の読書経験の中で最大の自信獲得となりました。読めるじゃん俺!て、な感じ。2024/11/24
i-miya
31
2012.02.22(つづき)中村健之介著。 この少女の病と回復の記録、ドストが若くして、すでにこどもの病んだ心に深く分け入る鋭い洞察力を具えていたことを示す。『貧しい人たち』のゴルシーコーフ、という男の幼い息子、が衰弱してひっそり死に行く場面。子供のこの理不尽さ、『カラ兄』には、イワンが神の創った世界を弾劾するシーン、章がある。この不条理、見捨ててよいのか。イワンのこのメッセージ、多くの知識人の共感を得た。2012/02/22
i-miya
31
2012.02.05(文庫で再読)中村健之介著。 (講談社学術文庫版刊行にあたって) ドストエフスキーをめぐる評論、研究。民族主義、人道主義、実存主義、キリスト教、フォルマリズム、構造主義、バフチン・ポリフォニー説等さまざまな思想、方法を信奉する世界の論者による多様で、華やかなドストエフスキー賞賛の山である。「ドストエフスキー・カルト」といっていいほど堅固な伝統が確立されている。2012/02/05
i-miya
30
2012.02.16(つづき)中村健之介著。 幸福もまた人によっては、恐怖や苦痛に変わりうる、とドストは考える。 『女あるじ』のカテリーナ、せっかく与えられた自由を返上する。ドイツ詩人、リルケ、「遠く離れて思いあう愛こそ、理想の男女の愛だ」(『マルテの手記』)ドスト『かよわい・・・』は、ゴーゴリ、短編『結婚』が見本だろう。もう一人、『かよわい・・・』のワーシャの友人、アルカーヂーの「ネワ川の幻」、何も残こらないのではないか。『未成年』の朝霧も同じ。黙示録の予言そのままが、ロンドン万博会場の何万の群集。2012/02/16
i-miya
28
2012.03.04(つづき)中村健之介著。 (アリストーブ) この男、だまっておくわけにはいかない。人間がどこまで卑劣になれるか、それを示す見本。信義に厚いドスト、ぺトラシェフスキー・サークル事件、同志33人、友人守る態度、崩さないドスト。人間が何の良心の咎めもなく、道徳的感覚をまひさせうるものなのか。それを示す、この上もなく厭わしい事例、実例。2012/03/04