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内容説明
前期のナショナリズムは、なぜ、ウルトラナショナリズムに向かったのか。「靖国問題」とはなにか。戦後社会とナショナリズムの相関とは……。「日本」を根本から考えなおすべき今、ナショナリズム研究に大きな足跡を残してきた社会学者が問う、日本のナショナリズムの本質!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
24
大著『ナショナリズムの由来』の付属論文集のような位置づけのようです。ナショナリズムは国民的帰属という世界中どの国民も持っている普遍と具体的には手の施しようのない固有性をもって現れる二面性があります。同時に、ナショナリズムは近代国民国家的現象として客観的には新しくみえるが、主観的には古い起源を持った存在にみえます。言うまでも無く著者は、資本主義がグローバリズムという普遍とヨーロッパで発展した特殊という二面性を持った存在であるということと、ナショナリズムが同じ構造を持っていることに注目しているようです。2018/08/30
白義
14
タイトル通り、大澤理論によるコンパクトで手堅い近代日本ナショナリズム論。ナショナリズム入門から明治と昭和のナショナリズムの違い、若者の右傾化と靖国に民俗学と各論的だけどバランスよく論文が集まっている。キーワードは相変わらずジジェクと社会学を応用した他者論、意識論で第三者の審級やアイロニカルな没入などいつもの大澤真幸用語が使われ、抽象的だがかなり状況を言い当てたナショナリズム理解が示されている。特に靖国問題から新たな歴史倫理を探求し、超越的な他者も汚濁を抱えているという三章はスリリングだ2011/09/24
またの名
13
アニメのコードギアスや数学の教師に点の性質を尋ねて得た答えに納得できず自殺寸前までいった超国家主義者の井上日召などの一見どうでもいい特殊な例がまさしく普遍性に至るため必須という弁証法の基本アイデアと同じ理屈で、超国家主義者が天皇を単に超越者としてではなく平凡で胴上げしたくなるような具体性と超越論性の結びついた逆説として求めたロジックや、アンダーソン、ゲルナー、スミスの三大ナショナリズム論、歴史認識と審判者たる神の視点、若者の右傾化と窪塚洋介とオタクの関連を分析。歴史学にとどまらない思想的知見を欲する人に。2015/08/15
ハチアカデミー
11
ナショナリズムという心性は考えれば考えるほど逃げていく様な不思議なものであるということがよくわかる一冊。国家というものが「想像の共同体」であり「共同幻想」と仮定し、それを広げるものがメディアだとする。共同体に住まう人々の共通認識が国家を形作るのだがしかし、国家はイデオロギーも隣人愛でもない。ただその国に生まれただけで付与されるもの。無名の共産主義者の共同墓地は作られないが、無名戦士の墓は作られる。そこから靖国問題へ論を広げた第三部、そして若者の保守化という論点を精査し現状を論じる第五部が読み所。2013/11/23
かんがく
8
タイトルよりもだいぶ広いテーマを扱っている印象。ナショナリズムを特殊性と普遍性という視点から分析する。2024/03/20