内容説明
外交官として北方領土交渉の第一線で活躍した著者が、人間の本性を知り尽くしたインテリジェンスの技法を明かす。「私が体験したハニートラップ」「酒は人間の本性を暴く」「賢いワイロの渡し方」「上司と部下の危険な関係」…。スパイがカネやセックスをどう利用するか。外務省・松尾事件や小渕とプーチンの真剣勝負。ビジネスマンのための実用書としても役に立つ、第一級の教科書。その“実用篇”ともいえる「東日本大震災と交渉術」の一章をあらたに書き下ろした増補版!
目次
神をも論破する説得の技法
本当に怖いセックスの罠
私が体験したハニートラップ
酒は人間の本性を暴く
賢いワイロの渡し方
外務省・松尾事件の真相
私が誘われた国際経済犯罪
上司と部下の危険な関係
「恥を棄てる」サバイバルの極意
「加藤の乱」で知るトップの孤独
リーダーの本気を見極める
小渕vsプーチンの真剣勝負
意地悪も人心掌握術
総理の女性スキャンダル
エリツィンの五段階解決論
米原万里さんの仕掛け
交渉の失敗から学ぶには
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
89
再読。あと何周するかわからないくらい面白いです。理解できない人に理解させるのは至難の業。しかし処方箋はあるとのことで、それは“旧大日本帝国陸軍の統帥綱領と統帥参考を勉強すること(p498)“には大変驚きました。統帥綱領は敗戦時に焼却されたのでは?と思っていましたが、当時の高級将校の教育が暗記中心だったらしく、旧陸軍将校の人々により1962年に復元されたという事実にも驚きました。また、こんな処方箋を思いつく著者にも驚愕です。2017/01/07
gonta19
80
2011/6/10 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。 2015/11/30〜12/15 佐藤優氏の文藝春秋の連載をまとめたもの。外交官時代の政治家とのかけひきの裏側を披露している。東日本大震災時のことを書いた文庫本のためのあとがきも素晴らしい。 私自身はこういう腹の探り合いなどが苦手なのだが、来年4月からそういうことをやらないといけない立場になりそうなので、今から憂鬱である。が、本書を座右の書として何とか乗り切りたい。2015/12/15
ehirano1
61
本書で多数引用されていた「ロシアは今日も荒れ模様」をつい何冊か前に読んでいたので、より興味深く読めました。著者は各々で異なりますがこの2冊はセットで読んだ方が種々の意味で効果的だと思います(引用所の著者である米原万里氏も本書にかなり重要な人物として登場しますし)。それよりも何よりも、このタイミングでこの2冊に出会えてことは私にとって当に「カイロス」なのかもしれません。そして「カイロスに対して人間は応答責任を負う(p488)」とあります。えっと・・それでは・・・・・。2016/11/05
佐島楓
44
「インテリジェンス機関は、欲望研究の専門家集団」だと著者はいう。確かに、むき出しの人間のやり取りが書かれ、観察眼と凄みを感じる。動物行動学が人間にも応用できるという記述に、人という存在の本質を考えずにはいられなかった。2015/08/13
sayan
29
個人的に著者の作品は好き嫌いが分かれる。彼の独特の視点と分析を用いた作品は非常に面白いと感じる。が、近刊に多い対談系は苦手とする。さて、本書では外務省の東郷氏が橋本総理にロシア情勢と北方領土問題の突破口を説明する場面の解説が面白い。特に、孟子『公孫丑章句上』一節の「天時不如地利。地利不如人和」をベースに、天の時、地の利、人の輪という戦略をもって説得を進める。その背景や効果を分析する箇所が非常に示唆的で興味深い。著者の「宗教改革の物語 近代、民族、国家の起源」が文庫版で出版された。久々に読んでみたいと思う。2018/09/26