内容説明
日本人が「イギリスの情報機関」あるいは「スパイ活動」と聞いて、思い浮かべるのは「MI5」や「MI6(SIS)」などの近代的組織、すなわち映画『007』シリーズでジェームス・ボンドが活躍したような世界である。しかし本書で紹介されるのは、それよりさらに歴史をさかのぼった時代の話である。「イギリス情報部の歴史は、MI5やSISの設立よりもずっと早く、エリザベス一世時代の宰相ウォルシンガムに始まったのであった。しかもウォルシンガム以降、クロムウェルの時代にはジョン・サーローという“スパイマスター”が出現したし、あのナポレオンとの戦いでは、のちの『エニグマ解読』に匹敵するほど重要な暗号解読作戦が実施されていた」という。長年、イギリスがどのように情報を扱ってきたのかという歴史の「核心」が、本書によって明らかになる。その核心を知ることで、日本の外交と政治はより一段の高み、深みへ到達することができるだろう。
目次
第1部 大英帝国の興隆とイギリス情報部(ウォルシンガムに始まる情報伝統;二つの異なるスタイル ほか)
第2部 ドイツ参謀本部と向き合って(組織的なインテリジェンスの時代;MI5とSISの誕生 ほか)
第3部 アドルフ・ヒトラーとの対決(平和とターフ・バトルの到来;再びドイツは脅威となるのか ほか)
第4部 イギリス情報部のさらなる現代化(継続された改革;日本の教訓)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kazinagaki
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イギリスの国王大権がインテリジェンスで得た情報を元に時機に応じた臨機応変な対応を行政が行えるバックボーンになっているという話は興味深い。国家が生き残る為に必要な情報体制の要件は、1中央情報機関、2情報収集機関、3情報保全体制、4オーバーサイト機関の4つであるとのこと。4の情報組織監視機関の運営は国民全体の情報に対する意識向上など相当難しいと思われる。イギリスのマスメディアは確かに上手くやっている。この辺り原発事故関連の情報管理を見ていると鎖国のブランクという歴史の差を感じた。2012/09/02