内容説明
2011年度芸術選奨受賞作家。謎の死を遂げたパンチェンラマ十世が、突然蘇った。卑しい男の魂が転生してしまったのか、この活仏(かつぶつ)は意地汚くて女好き。動くミイラと化したラマは、当局の目を避け、小僧のロプサンを連れてインドへの道を急ぐが……。核の脅威が迫るチベット高原でラマはある行動に出る。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
375
巻末にはチベット取材記まで付いていて、著者の意気込みもひとしおなのだが、残念ながら『弥勒』が持っていたような魂の震えはここにはない。中国の中にあって、チベットが、そしてチベットの人々が置かれている苦境はよくわかるが、小説としてそれを伝える方法として「スラップスティック活劇」(作者の言)を選んだのは、的を外してしまったようだ。パンチェンラマ10世の造型もやや不徹底であるように思えるし、ロプサン以下の他の登場人物もいささか魅力に乏しいようだ。「心余りて言葉たらず」といったところか。2020/12/25
tama
24
図書館本 篠田シリーズ いやーーー面白かった!最初はスラップスティックかと思っていたらじわじわと。女目線じゃないけどいい出来だなぁ!アクアリウム、弥勒を融合させ更に数段階引き上げたような作品。それでいてラマと博士の口論場面などまさに筒井風味!勿論、小説的ご都合主義はチラチラするもののそれ自体が文章にとって「クスクス」いう感覚につながり「嫌にならない」。巧いものです。これは黄金ミイラ男の冒険物語と考えるのがよろしいかと。2016/03/01
ちゃま坊
16
チベット仏教の高僧のミイラが生き返り、説法をして歩く珍道中。水木しげる「カッパの三平」に出てきた死神を思い出した。高僧なのに色欲と食欲のミイラという設定が笑える。食えば当然脱糞する。死なないし暑さ寒さも感じないから妖怪の仲間に違いない。追う敵役が中国●●党。チベットの民を虐げ自然破壊を企む悪の野望をうち砕けるか。2024/06/10
Maki Uechi
16
御茶目で短気な金色のミイラとチベット中を飛びまわって酸欠状態です。楽しかった~♪2014/06/10
キムチ
14
弥勒が結構面白かったので手に取った・・少々あてが外れたが。というのも、これはファンタジィー。チベットを舞台にしたラマ僧が中国工作員の関わりで復活してやってくれる。 インド亡命を念じた高僧は政治問題のみならず、煩悩も手玉にとって活躍。 パンチエョンラマや亡命問題を扱っているだけに、非日常性抜群で一気に読めたが、それだけ。 まぁ、行った事がない国、しかも死者と生者の共存が日常溢れている国なのでさもあらんとは思いつつ・・ 中国共産党政権とチベットは流血問題があるだけに重い。文中のセリフは筆者の造詣を感じさせた