内容説明
群像編集部の若手編集者羽田御名子のもとに、小説家志望の安良川王爾から持ち込まれた原稿<裂>。登場人物には御名子の名が使われ、穢されていた――。「群像」連載時から注目を集めた作品がついに単行本化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よしたけ
38
著者作品の初読だが、自らの半生を投影した作品なのか、著者同名の作家や講談社女性編集者などが登場。主人公は女性編集者、作家志望のヒモ彼氏達との赤裸々な性体験が描かれるが、題名通り彼氏達の価値観も「裂けている」。飄々として見える編集者だが、多重人格的な側面を持つヒモ彼氏や担当作家に心を委ねる。お高くとまった性格のキツい女性ほど、深みにハマるとトコトン尽くしそうだが、そんな心理を繊細に描写。私が考える小説の醍醐味である、価値観の異なる他人の心理に没入する、複雑な文章表現に触れて学を深める、を満たした作品だった。2021/07/13
キク
18
女性編集者と小説家志望の若者の、新人賞と性についての小説。花村や春樹さん、中村文則を読んでると「エンタメ」と「純文学」のカテゴリー分けって、あんまり意味がないんじゃないかと思う。純文学最高峰の芥川賞受賞のベテランが、こんな俗な話を、こんな凄い技量で書いたら、僕としては、エンタメだろうが純文学だろうが関係なく、ドキドキしながら読むだけです。ただ、中村文則と同じように、面白いからと言って、迂闊には人に薦められないけど。2020/11/27
きょん
14
文学賞を目指す青年と若手女性編集者の関係を描く。暴力とエロスは作者のデフォルトだと思えば、編集者の醒めた視点や小説に仕える者と自負する編集者の有り様がおもしろく読める。2015/11/18
zazo嶋
7
んー...また萬月さんのこのパターンの作品だったかぁ...というのが正直な感想かなー。昨年読んだ「西方之魂」が凄いいい作品だったのに、またコッチの方向の作品と思うと流石に食傷気味なんですよね。今までは誰が読んでもこれ萬月さん、自分の事だよねという主人公がいろいろとブチ撒けていたんですが、今作ではとうとう作中に本人が登場して、今まで様々な作品で読んだ色んな持論を展開しちゃいます。もう、結構前から...読んでるからもういいよー...と正直思ってしまう。それに「セックス「と「暴力」は読者へのサービスと昔から言い2011/05/05
ウメ
4
人は生きていくために嘘や虚構が必要。小説の存在意義はそこにある。そして小説は嘘を描くものだが徹底的に律されていなければならない。偶然の連続は通用しない。現実に起こった奇跡的なことでも嘘くさいと思われたらお終い。2020/11/08