講談社学術文庫<br> 試験と競争の学校史

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講談社学術文庫
試験と競争の学校史

  • 著者名:斉藤利彦【著】
  • 価格 ¥990(本体¥900)
  • 講談社(2014/11発売)
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  • ISBN:9784062920438

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内容説明

私たちの国の学校は、なぜこれほど過剰に「試験」にとらわれてきたのか。著者は、画一的な「試験の実施」こそが、近代の日本に「学校」を普及させる動因だったという。夜を徹して行われる進級試験、衆人環視・戦慄畏縮の口頭試問、時に三割を超えた落第の恐怖。国民皆学実現の裏で、今に至る教育論争にも長い影を落とす「淘汰と競争」の起源を探る。(講談社学術文庫)

目次

はしがき
序章 競争と試験の状況から
1 諸外国からのまなざし
2 中学校時代の体験から
3 「試験準備に支配された教育制度」─「MISSION REPORT」から─
4 近代学校の創設期へ
第一章 試験の風景
1 学区取締の日記から─試験立会いの日々─
2 教育雑誌に見る試験と競争
第二章 試験制度の成立
1 「学制」の概要と理念
2 「学制」における試験制度の内容
3 各府県による多様な試験形態の成立
4 六種類の試験と二つの類型
5 「学制」後における試験制度の展開
第三章 試験制度の実際
1 頻繁に繰り返される試験
2 「大試験(卒業試験)」の実際と生徒たち
3 試験の方法と技術
4 試験問題と暗記注入の教授法
5 「比較試験」の実態
第四章 試験による淘汰と教育のひずみ
1 試験による落第
2 大量の不受験者の存在
3 中途退学と学校への恐怖・嫌悪
4 試験と競争のひずみ
第五章 仕掛けとしての試験─試験による競争の組織化─
1 近代学校の啓蒙装置
2 学事振興と「競争心」の利用
3 席次の競争
4 成績の公表と「観覧性」の技術
5 試験をめぐる賞罰の体系
6 地域内での競争と「比較試験」
7 競争の無規制な昂進と行政側の対応
第六章 中学校における競争と淘汰
1 試験と競争の特質
2 淘汰の態様─大量の落第と中途退学─
第七章 進学競争の世界
1 進学競争の激化と淘汰
2 序列競争としての進学競争
3 予備教育化と学校間・郷土間の競争
終章 「試験の時代」と競争
1 行政による競争の創出と利用
2 産業化の趨勢と競争
3 競争の自己展開と民衆の意識
4 試験の濫用による生徒管理
5 学事振興への阻害
6 試験と競争のその後
あとがき
学術文庫版のあとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ゲオルギオ・ハーン

16
主に明治時代の小学校、中学校の教育について『試験』をキーワードに書かれた一冊。近代化を進めるとはいえ、国家として成績第一での教育を進めた結果、過度な競争教育が行われていたことが分かり、とても衝撃的だった。生徒の人格などは評価の対象にならず、とにかく定期的に行われる試験と卒業試験だけで評価し、進級や飛び級、落第の判定を出していた。教育内容も理解がうまくいかない生徒へのフォローはなかった。そのため、小学校ですらスムーズに進級し、卒業となる生徒は三割(そもそも学校に行っていない生徒は除く)程度だったという。2020/08/20

シルク

12
非常に好きな本。なんつーか、「史料を読む」→「読み取る」→「出典を明らかにして資料を示し、こうこう、こういうことが確かに読み取れるだろう、と、読者に示す」ということを、ちゃんとやっている本で。そういう手続きが地道に、確実にとられている研究は……非常に……読んでいていい感じになってくる。自分もこのようにありたい。さてところでこちらの本は、明治期の学校、特にその試験の場、試験というものの在り様に焦点を当てる。明治期の小学生は、非常に――現在から見るとあまりに過酷過ぎる程に――厳しい試験に日々晒されていた。2018/06/30

ゆえじん

5
この研究で明らかにされるのは『明治期における試験と競争の学校史』に違いない.にもかかわらず本書は、現在の教育問題の急所を易々と射程に収めてしまう、というより「試験と競争」についての明治以来の問題は、現在において全く解決されていない.更新されてすらいないということを、敢えて明治期の詳細なデータを淡々と整理していくことで明らかにしていく.そのいやらしい手つきに痺れてしまった.あんまり読まれてないのかもしれないが、案外リーダビリティ高くてオススメ.教育関係者なら絶対読むべき.すくなくとも本棚には飾るべき.2018/12/05

メロン泥棒

3
明治を中心とした小学校・中学校での試験戦争。時代が明治に移り身分を問わない平等な学校教育を始めたが、試験の点数という新たなヒエラルキーを作り出した。学校間での成績競争が補助金の額に繋がり、教師の給料に繋がり、生徒間での上下関係に繋がる。これを酷いと思うか、何か新しいことを始めようとする試行錯誤の一貫ととらえるかで見方が変わってきそうだ。2011/03/17

真黒コスモス

2
明治時代の小学校を中心に行われた過酷な競争教育の歴史を説いた本。小学校から夜明けまでテストとか進級試験に落ちて自殺事案とかヤバすぎるよ…2015/05/13

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