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内容説明
「人に親切にしろ」「故郷を愛せよ」「社会のマナーは守ろう」。学校の道徳の時間に教えられてきたのは、このような徳育でしかなく、こういった言葉はもう十分、聞き飽きた。では、いまの時代・社会にフィットした道徳とは何か?また、それをどのようにして、子どもたちに教えたらよいのか?本書では、様々な倫理学の知見を掘り下げながら、哲学的にその本質に迫っていく。ひとりでは生き延びることができない時代に、他者と共に生きるための道徳が求められる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネムル
9
倫理を批判的に考察していくための、道徳「教育」を問いなおす本。結論自体は素直に納得いくものではあるが、サンデル批判や学校教育のパターナリズムなど、考察の粗いのが難点。個々のトピックではヌスバウムの「法律は感情を起源とする」という意見が面白い。2020/08/14
perLod(ピリオド)🇷🇺🇨🇳🇮🇷🇿🇦🇵🇸🇾🇪🇸🇾🇱🇧🇨🇺
6
なんと3.11前日刊。最初に、道徳と倫理の違いを明示して欲しかった。一般向けの本なのだから。個人的な意見では「~であるべき」が道徳で、「~であるべきか?」が倫理。 序章。先ず和辻哲郎の文章を引用して日本人の道徳観念の低さを指摘する。そこから道徳とは何か、道徳と民主主義社会が不可分であること、保守派のいう道徳が現代の道徳とはかけ離れたものであること、政治性を欠いた道徳、愛国心教育の不可等。→続く2022/04/04
しゅんぺい(笑)
5
現代の道徳教育のあり方、不完全な点を問いなおす本。著者の本は初めて読みますが、この本は新書でも深く突き詰めて書けていると感じました。 新鮮だったのは「民主主義の本質は対立を維持し続けること」という主張。確かに、何人も人間が集まっている場で、ひとつの意見に集約できるわけがなくて、そうやって対立とか異質性をどううまく扱うか、というところに民主主義の本分があるのかな、と思いました。 ただ、けっこう難しい内容も中にはあったので、また読んで理解を深めたい。2012/04/22
shin.y
3
徳育中心の体制を脱して、民主主義を支える主権者教育へのシフトを提言した一冊。「自由と平等」はリベラリズムにおいて同質性の強要、自律性の喪失であり、内包されるこれらの問題点を踏まえていかにその価値を推進すべきかを説く。興味深いのはサンデル教授のスタンスであるコミュタリアニズムが、必ずしも道徳性を育むものではなく、個人を抑圧し社会から疎外する方向に働くことが多いという指摘。道徳と政治が切り離せないということは未だ途上の段階であり熟していないことを示す。そこで試されるのは私たちのシチズンシップではないだろうか。2015/04/01
ソーシャ
2
哲学者が民主主義社会の担い手を育てるための道徳教育の原理について考察・提言した本。教育哲学の本かなと思ったら、倫理学や政治哲学の議論もなされていて内容は濃いです。民主主義の本質を同質性の強要ではなく、多元性とし、共感とインクルーシブな態度をシティズンシップの原理に置いたうえで、民主主義を発展させていくための教育をすべきだという著者の立場は、理想論っぽくもありますが、道徳教育を考えてみたい人におすすめできる本ですね。(ただ、初めのうちは最低限のルールを押し付けざるをえないとも思いますが)2014/06/28