内容説明
大学生のゆきなの前に、長く会っていなかった兄がいきなり現れた。女性と料理と本を愛し、奔放に振舞う兄に惑わされつつ、ゆきなは日常として受け入れていく。いつまでもいつまでも幸せな日々が続くと思えたが…。ゆきなはやがて、兄が長く不在だった理由を思い出す。人生は痛みと喪失に満ちていた。生きるとは、なんと愚かで、なんと尊いのか。そのことを丁寧に描いた、やさしく強い物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ウッディ
230
料理上手で、読書家、そして女の子に優しくモテる兄・禎文と妹・ゆきな。兄の作ってくれる料理を食べ、読書や人生談議をする仲のよい兄妹の穏やかな日常と思いきや、兄は二年前に死んでいたのだった。兄が死んだ原因、そして戻ってきた理由は?短編集かと思っていたら、9つの小説をモチーフにした長編でした。コミカルで爽やかなタッチで交わされる会話と香月君との初々しい恋、ゆきなの抱える重い過去にも関わらず優しく、軽やかに物語が展開します。適当に作った料理と同じように、自由に生きることの大切さを伝える兄の言葉が響きました。2020/05/10
ユメ
214
本を読むこと、美味しいものを食べること、人を愛すること。ごく平凡だけれど、じんわりと幸福な日々。ーかりそめの幸せは、やがて終焉を迎える。「やさしい物語」そう謳われるこの物語が辿り着いた先は、本当に優しいのだろうか。読み終えた時は、なんて残酷なのだろうと思った。そこに許しはあるけれど救いはない、そしてこれからも永遠に来ない。けれど、一晩明けた今、何かを決定的に欠いた上でまだ歩いてゆけるのは、やはり優しさではないかと思う。人間の業は底が見えないぐらい深いけれど、生きているのはそれだけで尊いことだと教わった。2015/03/24
ヒロ@いつも心に太陽を!
205
【文庫で再読】大好きな本のひとつ。お兄ちゃんがスプーンに料理を取り、差し出す。それを「わたし」が食べる。ろくに食べられない精神状態の妹のゆきながお兄ちゃんの手からならば食べられる、というあの場面がとても印象的。《食べてみないとわからないなんて、まるで人生みたいじゃないか。(略)しょせんはトマトスパゲティだから、なにかを入れすぎても、そこそこおいしくできるんだ。ほら、それもまた、人生みたいだろう》本を読むこと、恋をすること、食べること。私自身の生き方もこの3つで出来ているから余計に愛しく思える一冊。2014/03/28
相田うえお
175
★★★★☆17010 たまにはなぞなぞで。足があって、暑いときはダラダラして、電話もok、誰とも話せ、誰からも見える、料理も作って食べて、体に触る事も出来る。デートもできるよ。さて、これな〜んだ!本作品に出てくる兄の幽霊なんです!読んでない方はこれが幽霊とはわからなかったでしょ?つまり普通の人と殆ど変わらないんですよ。こうなると幽霊の定義を考えてしまいますね。普通なら頭に白い三角あって空中に浮いてて壁を通っちゃうとかなんでしょうけど。。しかし、この作家さんはびっくり設定でも読ませてしまうのが上手いな〜。2017/02/01
❁かな❁
173
橋本紡さんを読むのは2作目。とても優しくて切なくて素敵なお話☆お兄ちゃんがとても温かくて深い愛情で妹のゆきなの事を想っていて感動しました★お兄ちゃんが、ゆきなにいつも手料理を食べさせてくれるシーンもいいですし、ゆきなと香月くんのピュアな恋も可愛いし、お兄ちゃんの名言もいいし、お兄ちゃんのレシピもあり盛り沢山!タイトル通り九つの話に分かれていて昔の有名な作品も出てきます。後半いろいろわかってきてからは涙が溢れて止まりませんでした。本当にお兄ちゃんの愛情をいっぱい感じます!とても優しく癒してくれる作品です☆2014/06/10
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