内容説明
美しい王妃は侍女ツルの言葉によって、しだいに圧政者となり、人の道から外れてゆく。そして現代の小さな街に住む老女との関わりは? 時代はうねる。物語が生まれる。寓意が深まる。「わたしは、人の心にとり憑いて、わたしにとり憑かれるような心を持った人間を滅ぼしてやるの。人間を滅ぼすほど面白いことはないものね。え? 恐ろしいって? わたしのこと?」毒のあるファンタジー!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カピバラ
21
こ、怖い。ラストがまさかのツルが!王妃が煽てられて、破滅して行く様は古今東西どこでも変わらないことですな。盛者必衰、驕るものは必ずしっぺ返しをくらう。いつの世も、女は怖し。2014/05/23
hnzwd
19
バッテリーのあさのあつこが書いたホラー小説。連載小説の縛りから一話は短めですし、序盤の話はグロさにより過ぎてる感はあります。が、中世〜近世を思わせる王国の崩壊と、現代の奇談が徐々にシンクロし、融合していくのは見事。一気に読んじゃいました。2012/12/08
BUBI
15
全ての始まりとなる「その一 水の音」が凄惨な話なので、ずっと嫌な気分のまま読み進めた結果、結局、救いもなくそまま破滅して終わるという…どういう感想を持てばいいか分からない話でした。ひたすら胸糞悪い物語です。私はエロもグロも耐性はある方ですが、何だかちょっと…「あさのあつこ」さんてあまり読んだことないんですが、もしかして向いてないのかも。2024/10/14
こたろう
14
『バッテリー』と同じあさのあつこが書いたとは思えない、ゾクゾクするほど毒々しい物語。王国の美しい后が権力に取り付かれていくファンタジーのような話と、日本人の老婆の恐ろしい語りが平行して進む。二つの世界がツルという名前と怨念を軸に絡まり、ねじれていく。肉体的な飢餓感、精神的な飢餓感、それらが人間の醜い欲望を呼び起こし全体を繋いでいるようだった。好みが分かれそうだけど、私は好きだな。短編『崖の上』も哀しい余韻の残るラストがよかった。2011/02/24
紅
12
単行本既読。表題作は不思議で怖い連作短編。童話と現実が入り混じって、結局どうなっているのかはよくわからない。しかし、雰囲気がとにかく好きな作品。同時収録の「崖の上」は森の民と人間の少女の恋愛もの。優しくて哀しくて良い。2013/04/03