内容説明
直木賞作家・角田光代が全力を注いで書き上げた、心ゆさぶる傑作長編。不倫相手の赤ん坊を誘拐し、東京から名古屋、小豆島へ、女たちにかくまわれながら逃亡生活を送る希和子と、その娘として育てられた薫。偽りの母子の逃亡生活に光はさすのか、そして、薫のその後は――!? 極限の母性を描く、ノンストップ・サスペンス。第2回中央公論文芸賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1276
希和子には拭いがたい過去があり、そして痛切なまでにかけがえのない現在がある。しかし、彼女の未来は永遠に閉ざされていた。そして、その語りを受け継ぐ恵理菜には茫漠たる過去があり、あてどのない現在が横たわる。時間はまことに残酷だ。しかし、「産むこと」がかろうじて未来への曙光を見せる。それは、希和子がとうとう果たせなかったことであり、また恵理菜にとっての疑似的な反復であった。そして、その一方には家庭の崩壊があり、小説の全体を覆うトーンは限りなく暗い。薫を喪った希和子の心情が、果てしない儚さを喚起しつつ読者に迫る。2016/09/03
HIRO1970
942
⭐️⭐️⭐️題名に惹かれて手に取りました。角田さんはお初です。私自身は男の子を2人育てています。以前から女の子は丈夫で手が掛からないとは聞いてはいましたが、母子手帳が無いのに4歳まで一度しか病院に行かずに済むのにはいささか面食らいました。これなら女の子なら4〜5人いても育てるのは可能かもと思われました。(男の子は最低でも年に5回は病院通いが必要だと経験上思っています。)この作品には頼りになる女性は大勢出てきますが、男性はダメ男ばかりで全く頼りにはなりません。日本の人口増加よりもリアリティがある話でした。2015/10/25
遥かなる想い
806
永作博美・井上真央主演で映画化され、本屋で大々的に置かれているのもあり購入した。最初は子供を誘拐して育てた母の物語であった。ところが逮捕された後の第二章は誘拐された子供の物語であり、それが誘拐犯の人生と 微妙にクロスして最後のラストに繋がっていく…角田光代はこの物語で何を描きたかったのだろうか…蝉は長い間土の中で生きながら外に出ると7日間で死んでしまう…本書のタイトルに込められた想いの ようなものが感じられる。2011/05/08
どんふぁん
780
2019年2月9日読了。作品の評判は聞いてましたので、どんな話かはわかってましたが、それは希和子サイドの話だけでした。薫サイドの話では、恵梨奈になってからの苦労と苦悩の日々が描かれてて、本当に大変だった内容でした。希和子の行動は女の私から見ても狂気の沙汰としか思えず、共感することは出来ませんが、薫として一生懸命育てた年月は嘘ではないと思います。恵梨奈も一生懸命生きてほしい、新しい命とともに。この作品を紹介してくれた方に、今度お礼を伝えよう。そして、近々小豆島に行こうと思います。2019/02/09
青乃108号
746
永作博美の主演した映画はDVDで随分昔にみた。永作博美が可愛らしい感じで好きだったから。角田光代の本は初めてで、脳内で誘拐犯の女を永作博美に変換しながら読んだ。これはしかし、男の俺には本当の意味での理解は難しい物語だ。途中でそう気付いたが最後まで読んだ。脳内の永作博美演じる誘拐犯をなんとかしてやりたかった。映画で唯一記憶してる永作博美のセリフ【その子はまだ朝ごはんを食べていないんです】。映画のオリジナルかと思ったが、原作にもちゃんと、あった。せつない。かえすがえすも永作博美をなんとかしてやりたかった。2022/02/23