内容説明
裁判員制度が動き出し司法への関心が高まる中、司法の頂点に立つ最高裁。判事たちの合議で決まる最高裁判決に、どのようなカラクリがあるのか。過去10年の重大判決の内幕を追い、権威に隠れた最高裁の真実の姿に調査報道が迫る。
目次
イントロダクション 少数意見のストラテジー
第1章 最後の砦 揺れる死刑
第2章 地殻変動 選挙権が認められるまで
第3章 正統と異端 「藤山判決」を追って
第4章 伏流水 国籍法違憲判決の舞台裏
米国編 リリーの訴え、判事の怒り。そしてオバマが署名した
終章 最高裁はどこへ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じゅん兄
24
この手の話はなかなか表に出てこないので非常に興味深く読みました。ガチガチの司法消極主義だった最高裁が、もしかしたら積極主義を取り入れようとしているのか。そんな漠然とした思いがあり、卒論に「日本国憲法における司法消極主義の考察」をテーマとした僕としては、最高裁そして最高裁判事たちの変化の様子がはっきりと見えたことがとても面白かった。そして今、集団的自衛権の憲法解釈の変更や憲法改正そのものなど、日本国憲法が揺れています。最高裁として国民主権を守るために何ができるのかを積極的に考えてほしい。2014/08/24
おおかみ
14
光市母子殺害事件、在外投票訴訟、国籍法違憲訴訟といった近時の最高裁判決を中心に、一般には注目されることの少ない「少数意見」にスポットを当てたドキュメント。全員一致に至らなかった場合に少数派が表明する反対意見・補足意見は、後々の裁判で主流になったり、立法として実現したりと、法律のダイナミズムを体現するものとなり得るのである。朝日新聞の特集がベースで非常に読みやすい。司法改革を考える一助になる一冊。2011/03/28
asukaclaesnagatosuki
9
一部の内容については本になる以前に新聞記事で読んでいて、切り抜いていたのですが、本屋でたまたま手にとったところ以前読んだ記事を思い出し購入しました。全部は読んでいないのですが、法律をいっしょに勉強した友人にも紹介しました。本のタイトルはちょっと売るための感もあるような印象・・・優れた取材。2011/11/27
といさま
8
星5つ。ゼロ年代以降の最高裁の「揺れ」を最高裁の中から見た構成になっており、有名な最高裁判例がいかにしてこのような結論に至ったのかをドキュメント風にまとめており、読み物としてすらかなり面白い。様々な観点から最高裁の立ち位置・機能が現代ではどのように問題になっているのかを本当に分かりやすく示している。非常にものものしく、それでいて抽象的に取っ付きにくい感じがする問題点を、分かりやすく、しかも先鋭的に示し得た本書はかなり偉い。ここまで構成しきった著者らの苦労は計り知れない。これが780円とは本当に素晴らしい。2011/01/28
shigoro
7
小法廷での5人の攻めぎ合いで意見は通らなかったが、「補足意見」として示した後に、時代が変わったり、世間の風向きで「少数派」が「多数派」へと生まれ変わることが、ここ最近よくある。法の番人として何物にも囚われず、法だけ見てきたが、被害者への世間や社会での反応を気にするようになってきてるな。ある意味絶対的な法に対して、保守かバランスか拡大解釈か?。裁判官の信念が問われるな。 2011/10/25