内容説明
父と子のふたり旅が紡ぐ新感覚ロードノベル。
かつて新進気鋭の写真家として脚光を浴びた吉川士朗は、出張中に身重の妻が緊急手術をしたことが原因で、長期の旅行を伴う撮影をやめてしまった。日々の仕事に埋没していた折、旧知の編集長から米国フロリダを旅する紀行写真の企画を持ちかけられる。これは「最後のチャンス」かもしれない……。そんな思いを抱きながら、病弱の妻を日本に残して、小学2年生の息子・登士を「助手」として連れていくことになった。
「世界でいちばん美しい道」を息子と一緒に見にいきたい----。マイアミ国際空港から米本土最南端「0(ゼロ)マイルの街」キーウエストを目指してドライブする「ふたり旅」。ホテル内を無断で撮影しようとして警備員に拘束されたり、夜の繁華街で息子が行方不明になったりと、トラブルの連続で思うように仕事ができない士朗は、つい息子にきつくあたってしまう。しかし、些細なことでケンカをしながらも、旅先で様々な人たちとの出会いを経て、「助手」から「相棒」へと、親子の距離も少しずつ変わっていく。そして「世界でいちばん美しい道」の果てで、士朗たちが出会ったのは……!?
父と息子の交流を描いた感涙必至の紀行小説、待望の電子化。
【ご注意】※この作品はカラー写真が含まれます。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメフトファン
37
久しぶりの再読。以前読んだ時よりも子どもの事や子どもとの接し方について考えながら読みました。きっと子どもが成長して段々と自己主張するようになってきたからなんでしょうね。フロリダの美しいサウスビーチやキーウエストへの撮影の旅。初めは邪魔だなと思っていた一緒についてきた息子がかけがえのないパートナーになっていく姿がみずみずしく書かれている本作。いつか僕もこの本の表紙で描かれているまっすぐに海に伸びていく道を走りたいなと改めて思いました。勿論家族も一緒で。派手ではないですが、じわじわと胸が暖かくなる名作です。2015/04/12
gachi_folk
6
息子との二人旅。なんとも羨ましいシチュエーションだ。時間と共に近づく二人の距離。子どもから学ぶ事で親も成長するんだな。僕にとっての天使は、この本を勧めてくれた名古屋の書店員だったのかもしれない。いい本に巡り合えた。2012/08/17
25325
4
フォトグラフに関する情熱がすごいなと思ってたら、作家さんがフォトグラファーなんですね。 特に打ち震えるような感動があるわけではないけど、子供と男旅をしようと決意させられる内容でした。巻末の重松さんの「人生は旅だ」という言葉が心に残る。2012/02/29
こたつ
4
写真にかける熱い思いと、旅の楽しさが伝わってくる本です。アメリカには行ったことがないのですが、魅力が伝わってくるものでした。やはり、有名なところよりもマイナーなところへ惹かれる、そんなところが好きです。上手くいかない息子との掛け合いや、車での撮影のシーンがリアリティありでよかったです。作者の伝えたいことは、最後のおばさんの台詞なのでしょう。2011/12/08
ふーてー
3
父と息子のロードストーリー、楽しかった。7歳の息子と二人でいるときのパパってこんなのかぁ…いいなぁ。士朗が登士くんとのままならない関係を築いていく姿が眩しい。この先の旅、帰ってきてからの二人がどう過ごすのか、終わりまで読んでわくわくと本を閉じた。フロリダの天気、ホテルや道の旅の描写も魅力的だけど、これは小説として子連れゆえのトラブルが良い。しかし大好きな『まだ見ぬホテルへ』の稲葉さんが、小説を書いているとは知らなかった。他の作品も探してみよう。2016/06/04