内容説明
なぜ今「正義」なのか?経済格差のもとに社会が分断されるなか、「善」はもはや抽象的お題目にすぎないのか? ケータイ小説から沖縄基地問題までの多様な事例の検討、意表をつく思考実験、そしてカントからサンデルに至る正義の理論を徹底的に吟味し、普遍的連帯のアクロバティックな可能性を論じる。大澤社会学、至高の到達点!
目次
第1章 物語化できない人生―「生きづらさ」の現在を考える(蝉の八日目 新しい傷 物語化できない他者)
第2章 正義の諸理論―サンデルからアリストテレスまで遡る(功利主義―「量大多数」か「最大幸福」か リベラリズム―普遍性こそ正義の条件 コミュニタリアン―共同体こそ正義の条件 アリストテレス主義―幸福こそ正義の目的)
第3章 資本/国家/民主主義―物語はなぜ崩壊するのか(アリストテレスの盲点―快のパラドクス アキレスと亀―“資本”のパラドクス 絶対王権をめぐる謎―市民社会のパラドクス sリート主義と民主主義―代表制のパラドクス)
第4章 普遍的「正義」への渇望―リベラリズム再検討(イエスの奇妙な喩え話 二種類の物神化 知性の囲い込み 分断される労働者階級)
第5章 癒す人―正義と“普遍性”(マルクスはなぜホメロスに感動するのか 何が普遍的連帯を可能にするのか 人は運命を変えられるか 「新しい傷」はいかに癒されるか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
34
リスクが物語化に抵抗して、それらのことを理解することが出来ないことに、ひとびとが現在、余計に苦しみを味わっている理由である。まず、角田光代『八日目の蝉』の解釈から、問題提起までもっていく力量が素晴らしい。なかなかこういった着想は難しいのではないかと思いました。「正義」といって反応する多くの読者は、何かを早く言い切ってほしいと願っている。そのことに本書は、結論めいたことを先送りすることで抵抗しています。本書のレビューに低評価の多い理由はここにあります。しかし、その読者の態度こそ、「正義を言い切ってほしい」と2019/11/05
ネムル
16
3章以降の哲学・社会学・宗教等を往還しながら論を運ぶのが大澤社会学の醍醐味なのかなーと、詳しくないながらにそんな印象を受ける。が、次々に多くの学者の論を参照するごとに空しい印象も受けた。ついでにオチももやっとしている。が、2章の功利主義、リベラリズム、コミュニタリアンの意見を内側から食い破る論の運びは面白い。むしろ、こうした姿勢のほうにこそ学んでいきたい。2018/12/07
Gatsby
14
大澤先生の本はいつも読みごたえがあって、難解な部分も多いのだが、本書は、講義をもとにつくられているので、話し言葉だし、具体的な例も引かれていて、とても分かりやすかった。特に、第1章と第2章は、サンデルの本がわかりにくかった人にも理解しやすく、また、サンデルのコミュニタリアンとしての考え方の限界や弱点にまで言及されている。これらの2章を読むだけでも結構ためになる。角田光代氏の『八日目の蝉』という小説をもとに、物語化できない人生がいかにしんどいものかを説明し、そこにコミュニタリアンの限界を見るところは、圧巻。2011/02/14
NICK
11
ポストモダン的状況においては、大澤のいう第三者の審級(=物語)は凋落しており、「新たな傷」を癒すことが困難だ。そうした物語が困難となった時代の正義(=普遍性)とは何かを、いつものアクロバティックな思考で論じていく。サンデルはコミュニタリアニズムによって政治哲学を止揚しようとしたが、共同体への帰属そのものが共同体に還元しえない剰余(居心地の悪さ、生きづらさ)を産む。その居心地の悪さ、傷を負うことが共同体を越えた正義の可能性という癒しとなりうるという。個人的な感想だがこの結論にはかなり励まされる。2014/04/16
asukaclaesnagatosuki
8
ファミレスで一気に読了。大澤先生の本は断片的にしか読んでいないものの、近年の議論を凝集してる印象。近代社会を駆動している〈資本〉のメカニズムへの対応の適否を軸に評価される、功利主義、リベラリズム、共同体論の三対の思想のそれぞれの難所をいかにのりこえるか?という課題に向き合う手がかりを指し示しているといえるかな。共同体論に親和的な多文化相対主義の隘路としての文化に内在する否定的な残余にこそ、特定文化の文脈という限界を超えていく可能性を見出そうという着眼は「もう一つの感染的模倣(ミメーシス)」の議論とつながる2011/12/02
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