内容説明
国家の密約と夫の不実。西山太吉氏妻の告白沖縄密約をめぐる情報公開訴訟判決で、ベストセラー『運命の人』のモデル・西山太吉の名誉は回復された。本書は沖縄をめぐる本格ノンフィクションである。
目次
第1部 「夫の嘘」と「国の嘘」―西山太吉の妻啓子(十字架 暗転 傷口 離婚 再生 逆風)
第2部 「過去の嘘」と「現在の嘘」―弁護士小町谷育子(衝突 封印 反骨 記憶 宿題 告白 追求 判決)
判決
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
111
沖縄返還時の密約を追った本である。 本件を扱った小説としては山崎豊子の 『運命の人』が有名だが、本書は 西山太吉の妻と 弁護士に焦点を当てる。 国民に嘘をついて密約を結んだという本質を男女スキャンダルにすり替えた事件の裏面が 丹念に描かれる…日本における情報公開の 苦闘の日々が今に蘇る、そんな本だった。2022/07/27
Machida Hiroshi
6
外交上の密約と言う国の嘘を暴くことに挑んで記者人生を断たれた西山太吉さんは西山事件として有名です。著者は西山元記者の奥さんの啓子さんと、後に米国の公文書で密約の存在が明らかになってから起された情報公開訴訟の訴状をまとめた弁護士の小町谷さんの二人からインタビューします。そして、本書、二人の女性を通じて西山事件を描き出す骨太のノンフィクションを書き上げました。2015/07/13
ちんペー
3
これだけ沢山の事実を紡いで書き上げた著者に脱帽です。 「嘘をつく国家は必ず滅びる」吉野氏のこの言葉は印象的。 先日の国会答弁で「国益と党益が相反したらどちらを優先する?」と訊かれ、国益に相反すれば自民党は解散する。そんなの当たり前」と息巻いていた現首相。空言にしか聞こえないのは自分だけかな?2013/03/19
リョウ
3
密約そのものの存在よりも、その取材過程にばかり注目が行ってしまうこの事件だけど、ワイドショー的な側面ではなく問題の本質にきちんと着目したこの本を読めてよかった。これだけの資料が出ているのにいまだに密約はなかったとする国の説明にはとても違和感を感じるし、そもそもその必然性はあるのか?とも思う。個人的な恨みや名誉の回復もあるけど、あくまで国全体の問題としてとらえた代理人のスタンスにも共感を覚えた。2011/08/27
satooko
3
高校生の頃、澤地久枝「密約」を読み、衝撃を受けたが、公文書情報公開裁判報道で久しぶりに見た西山太吉氏の顔も衝撃的だった。確実に老いているが、諦めを超えた怒り・憤り・無念さを隠しもしない(隠すことができない?)。思わず見入ってしまうとともに、目を背けてしまいたくもなる。あれからどうしていたんだ?と思っていたら、新聞書評で本書を知る。前半は妻に、後半は情報公開法裁判担当の女性弁護士に焦点を当てたもの。前半はなるほどそうだったののか、後半もなるほど、なるほどだが(著者は朝日新聞記者)、澤地さんの力筆を待ちたいと2011/05/10