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内容説明
度を越した遊興、4度の休職と隠遁、東郷平八郎との明暗。「殉死」に沸騰する世論と、公表時に改竄された遺書。乃木希典とは、「明治国家」と根本的に相容れない人間性にもかかわらず、常に「国家意思」によって生かされ続けた人物だった。漱石、鴎外、西田幾多郎らの乃木評から小学生の作文まで網羅して描く「軍神」の実像と、近代日本の精神のドラマ。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
juunty
2
乃木希典は軍人ではなく学者、あるいは作家になればよかったのではないだろうか、との印象。明治の軍神と讃えられるが反動としての批判も強い。大将たる軍人は武を好み、勇猛果敢な意思を持っているはずという認識が崩れた。乃木将軍の人物については全体のうち150ページほどで、本人の手記をもとに記述され、他の部分は当時の新聞記事や意見書きなどを掲載している。当時そのままの文体が多く読みにくい面もあるが、客観的資料ともいえる利点がある。後半は乃木希典の生きた社会情勢の記載という意味が大きいと思う。2020/11/10
nox
1
乃木希典という人間の生涯を通して、明治の時代の変遷が描かれている。明治といえばやはり明治維新なのだが、その幕引きたる西南戦争、続く日清戦争、日露戦争と、まさしく日本が文明国の階段を駆け上っていった時代である。その中に生きた乃木は、明治という進化してゆく時代の中で、古い「武士道」を自己の信念として持っていた。人々に称えられ、誰でも知っていた乃木が、現代では忘れ去られている事に、戦争を契機とする断絶と時代の流れの速さを感じる。乃木に対する反応も、大正人程辛辣なのが日本人の精神の変化を表していると思う。2020/09/21
yasu
1
昭和までは有名人だったという乃木希典であるが、正直私たちの世代で知っている方はごくわずかなのではないか。当時は戦時を乗り切るために人々にとって精神的支柱が必要であったために乃木が神格化されたのだろう(個人的には軍神乃木像の記述を掘り下げて欲しかった)。漱石や鴎外などの明治人と志賀など大正人の乃木への感じ方が異なることも非常に興味深いです。2011/08/29
Yuuki Takanokura
0
乃木希典の生涯を比較的詳細に論じたもの。乃木日記や明治時代の文献引用が多いのは,よいような,悪い(読みにくい)ような。乃木希典に対する評価は低め。2011/01/30