内容説明
名画に秘められた犯罪を、絵画修復士の御倉瞬介が修復の手を進めながら、その絵にまつわる因縁を読み解いていく本格美術ミステリー。ピカソ、フェルメール、モネ、安井曾太郎、デューラーなど、人気の高い世界的な名画である肖像画の、傷つき変質した部分に隠された謎とは? そこに描かれた人物と事件のかかわりを、絵具の下地まで見透かす透徹した推理で、見事に究明していく。著者の、美術作品への鋭い鑑賞眼と合わせて、思慮深い人間観察が、確かに思えていた世界をみごとに反転させる。6話を収録した連作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bibi
37
初読みの作家さん。実在する画家のエピソードを織り交ぜつつ現在のミステリーの謎解きをしていく。芸術家、凡人には持ちえない本能(?)真髄(?)狂気(?)でびっくりするような動機で事を起こしてしまう⁉でも、読んでいる間じゅう、なんかじんわり温かさを感じる。美術鑑賞は大好きなので、こういうのは大好物です💛💛2020/12/21
roomy
26
黄昏たゆたい美術館より先に読み始めたのに読み終えるのはぐっと遅くなってしまった。初めて絵画修復士が謎解きをする話を読んだ。息子の圭介くんや家政夫の加護さんがとても気になる。もっと彼らの事が知りたいが推理物なのでそうもいかないか。2013/04/26
usarlock
23
絵画修復士・御倉瞬介が絵画の周りで起こる事件を解決していく短編集。各話に出てくるフェルメールやモネといった有名な画家たちについての雑学が面白かった。勉強になります。ミステリ部分の内容については少し物足りなさを感じたが、全体的に雰囲気がよかったので次も読んでみようと思う。瞬介の息子、圭介くんや家政婦の加護さんがもっと活躍してくれるといいな。ところでこの作品、登場人物名が唐突に出てくる気がするのは仕様ですかね。2014/11/17
みなみ
22
絵画修復士の主人公御倉が、修復過程で事件に関わり謎を解く連作短編ミステリー。絵画の修復方法は初めて知ることばかりで、興味深かったし、ピカソやモネ、デューラーといった画家の名画にまつわる話も知れて面白い。ミステリーとしては、謎を自力で解くことはできなかったけれど、後から考えるとなるほどと納得できる。2022/09/06
やっす
17
ミステリに、名画にまつわるエピソードなどを絡ませて一つの作品にしたという趣の連作短編集。あまり美術や名画といったものに思い入れのない自分の様な読者には、美術に関する部分とミステリ部分とのバランスが程よく感じられて結構面白かった。収録作中では、絵画に関するエピソードと、伏線の忍ばせ方やその回収といったミステリとしての巧みさが光る『モネの赤い睡蓮』が個人的ベスト。この本を読んで、今まで全く美術に興味がなかった自分でも作中で扱われている作品を見てみたいと思うのだから不思議なものですね。続きも読んでみようと思う。2016/09/29