内容説明
「特等席」に座り続ける国会速記者の証言は、そのまま戦後政治の裏面史である。ある者は東京裁判の判決文に関わって監禁生活を強いられ、ある者は吉田茂の「バカヤロウ」を聞き逃さず記録し、またある者は乱闘国会で前歯を失った。仰天の漢字誤読議員、田中角栄が見せた激昂、ずぶ濡れでなだれ込んできた安保デモ隊、中曽根康弘の思わぬ差し入れ――。「もの言わぬ職人」四十人が初めて固い口を開いた、本邦初の貴重な証言録。
目次
第1章 東京裁判「最後の生き証人」
第2章 速記者を泣かせた「難物」議員
第3章 抹消された「バカヤロウ」発言
第4章 安保闘争が残した高い柵
第5章 舌と喉が弱点だった池田勇人
第6章 コンピューターの“狂い”
第7章 台本があった「総理は男妾」発言
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mitei
214
政治の舞台である国会に速記者として勤めた人たちの証言。やっぱり強烈な個性を持った政治家は印象に強く残るんだなと感じた。2020/05/27
おいしゃん
33
滅多に光が当たらず、しかも今後の存在自体が危ぶまれる、国会速記者たちに焦点を当て、国会の様子や議員の素顔を描く。困難だったろうが丁寧な取材がうかがえ、まさに良い仕事した!と言われて然るべき作品。2019/11/09
TakaUP48
26
「質問者、答弁者、速記者で三位一体を形成。速記者の手を見ながら考えて発言することで、発言の内容、練度を向上させる効果をもたらした。国会に速記者がいるといないとでは、発言者の気持ちも違う」中曽根康弘の弁である。衆議院速記者に向けた言葉だ。国会の議事録を書いてきた人々の声を収録。東京裁判でのパール判事の意見書等の口実筆記を監禁状態で「ハットリ・ハウス」で動員実施。バカヤロウ解散は、委員会でのつぶやきだった!50年前の安保反対のデモ隊の国会突入時の恐怖。ハマコーの「殺人者…」発言にもビックリ!秘話は面白い! 2019/11/21
ヤギ郎
12
議員が熱弁を振るう演壇の前で、しきりにペンを動かしている人たちがいる。本書には10人を越える速記者の証言から彼らの仕事ぶりや国会風景がつづられる。近年、デジタル化が進み、速記者の役割が小さくなりつつある。インタビューに応じた中曽根元総理は「手を動かす速記者を見ながら、よく考えて発言することで、発言の内容、練度を向上させる効果をもたらしたのです。」と発言している。(196)。速記者は、「日本一、目立つ場所にいる黒子」(201)にして、最前列にいる聞き手なのである。2020/02/10
calaf
8
そうか、もう昭和時代に首相をやった人で存命中なのは、中曽根氏のみなのか...そしてITの発展/普及した現在はもう、速記者は養成しなくなってしまっているのですねぇ...2013/02/22