内容説明
東京・新橋駅のガード下、わずか6坪の理髪店がある。「バーバーホマレ」。1953年の開店以来、ずっとハサミを握り続けた一人の女性・理容師がいた。加藤寿賀、享年94歳。15歳で理容師修行を始めてから94歳で亡くなるまでハサミを置くことはなく、関東大震災、第2次世界大戦を生き抜き、はたらき続けた彼女の残した、魂の言葉。「自分のために働くとか、夢のために働くなんて、とんでもない。人さまのために働くのです。端を楽させるために働くから、『はたらく』なのです」。
目次
まえがき――加藤寿賀さんを偲んで
加藤寿賀・九十四年の生涯
第一章 「はたらき」続けて
第二章 「戦争」に生きて
第三章 日本人が忘れた心
第四章 生きる喜び
第五章 九十四歳、最後のお説教
あとがき――「職歴八十年」の笑顔
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まる
36
90を過ぎてこれだけお元気でしっかりされているのは凄い。心意気も尊敬します。努力と我慢の人生だったんだろうな。ただ、本当にこの方は立派だと思うのですが、こんな上司や親類がいたら仕事も育児もどんどん辛く苦しくなっていくだろうな……やはり根性のない私はほどほどに生きていこう。2018/03/03
masa
33
タイトルの「はたらく」が何故、「働く」でないのか…。周りの人達を楽させる=「端を楽させる」ために「はたらく」のだと語るのは本書の語り部・加藤寿賀さんだ。94歳で亡くなる3ヶ月前迄、現役の理容師として80年間、正に「はたらき」詰めの人世だった。やっと戦争から復員した直後に夫に先立たれ、ハサミひとつで二女を育て上げた彼女の言葉は、人間が本来持っている心のありようをストレートに語っていて思わず姿勢を正したくなる。よく耳にする道徳観念でなく、必死に生き抜いた人だからこそ伝わってくる真摯な言葉に胸打たれた。15802015/05/10
むつこ
25
生きるために始めた理容の仕事で生涯現役を通した女性の言葉集。どれも聞いたことのある言葉の数々の中にすぅーっと心にしみる一言がある。人生の中でたくさんの人とふれあい、感じ、身をもって経験した人の言葉は深みがある。他人に触れられることに苦手意識がある私、これからはもう少し身をゆだねてみようかな。2015/09/01
miu
23
80年間はたらき続けた寿賀さん。働くのではなくて、はたらく。はたらくとは、端が楽になること。関東大震災も東京大空襲も、夫の死も次女の死も、全て乗り越えてきた寿賀さん。はたらいてばかりって思ったけれど、そうじゃなかった。感謝すること。笑って過ごすこと。よく聞く話だけれど寿賀さんが語るとまた違う。怒ってはいけない叱らなくては。戦争を美化した話はいけない。水は大切にしなくてはいけない。今はたらいてる人たち皆に読んでもらいたい。なぜ、はたらくのか。おかげさまで仕事ができる。忘れてはいけないこと。2016/07/03
のほほん@灯れ松明の火
21
なぜ、はたらくのか。 94歳までずっと働いてこられた方の言葉は、とてもあたたかくて、とても重みがありました。「はた」を「らく」にするから、「はたらく」。 こんな風に考えたことすらなかったです。 行き詰まったり、辞めたくなったりした時には、この本のことを まず思い出そうと思います。 2012/04/27
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